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Vol.19:東京都・杏林大学医学部付属病院 3つの検査体制をワンフロア化、迅速な検査報告を実現 人的配置を最適化し、患者サービスに重点を置いた検査室へ

  杏林大学医学部付属病院(1153床)は、高度救命救急センター、総合周産期母子医療センターといった高度な医療を提供する施設として、東京都西部・多摩地区の医療機関と緊密な連携を図っている。臨床検査部では、2010年5月の新棟移転を機に、院内3つの検査体制をワンフロアに集約。これにより検体検査の効率化を図るとともに、外来採血の患者待ち時間の短縮に取り組み、採血受け付けから結果報告までの迅速化に取り組んでいる。

城技師長  高度救命救急センターは、全国で30施設、都内では杏林大学医学部付属病院を含め2施設しかない。重篤な患者が常に来院する同院の臨床検査部では、「安全、正確、迅速な臨床検査」を基本理念に、正確なデータを、より早く臨床側に返すことに力を入れている。
  3年前の新棟移転を機に、従来からあったルーチン、緊急、サテライトの検査体制をワンフロアに集約した。これにより院内で測定する項目は全て至急対応として迅速に報告する体制に改められた。「結果として順調に診療前検査が行えており、移転前の2年間と移転後の3年間の計5年の間に、診療前検査の比率は外来検査の3割から7割程度まで増大している」と臨床検査部技師長 城靖志氏は体制変更後の結果を踏まえて当時を振り返る。

ルーチン検査は89分→49分に

  生化学検査の場合、採血受け付けから結果報告までの報告時間(TAT)は、従来のルーチン検査で平均89分、サテライト検査室(至急扱い)では平均48分であった。新棟移転後は平均49分と、通常検査の検体数が大幅に増えているにもかかわらず、従来のサテライト検査並みの時間で測定できるようになった。さらにワンフロア化のメリットは、TATの短縮にとどまらない。「生理検査や外来採血といった患者サービスに重点を置くことができた」(城氏)と人員面でも効率的な配置を可能とした。
  従来、生化学自動分析装置は、3つの検査体制で合計6台が稼働しており、機器管理の手間やコスト、精度管理面での問題が生じていた。新体制では2台に集約、試薬の無駄を省くとともに作業の効率化、費用の低減を実現。精度管理面での課題もクリアした。

病院機能に対応した検査体制へ

  ワンフロア化された臨床検査部は、前処理、生化学、免疫の各機器を搬送ラインに連結したシステムを、大量処理、中規模処理の2ライン配置した。そして血液検査システム、鏡検のスペースを備え、輸血検査も実施している。外来採血室からの検体は、段差があるためにエレベーター機能付きの搬送システムでリアルタイムに搬送されている。
  前処理・生化学・免疫のコンパクトな搬送ラインを2ライン設けた理由について城氏は、「万一トラブルが生じても、一方のラインをバックアップ用にすることで、検査停止を回避できる」とシステムの理念を語る。2つのラインを効率よく稼働させ、メンテナンス時間も確保しながら、24時間効率的に運用している。
  生化学、免疫機器の機種選定は、信頼性や将来における項目の拡張性、さらに臨床医の意向などを踏まえて決定した。また、血液検査システムは、現在、ベックマン・コールター社のLHシリーズ、DxHシリーズをそれぞれ2台ずつ並行して稼働している。血液検査システムの選定ポイントについて城氏は、「血小板測定において、低値測定の感度・正確性・再現性が高い機種にこだわった」とベックマン・コールター社を選定した理由を述べる。
  同部の杉浦係長は低値測定を重視したことについて、血小板数が3万以下の患者は輸血の対象になるが、血液疾患を持つ患者は1万以下となることも多く、これら機器を導入する前は目視で判定していた。杉浦氏は、「LHシリーズ、DxHシリーズは、1万以下の患者でもほとんど目視と変わらない高い精度を有しており、ルーチン検査に適した機種選定であった」と述べ、血液内科の医師からも低値測定の部分では信頼を得られているという。

人的配置の最適化により 重心を患者サービスへ

  外来採血は、臨床検査部の検査技師が対応している。新棟の移転に伴い検査体制を最適化したことで、採血台は8台から11台に増設。TATの短縮に大きく貢献した。また、城氏自らが開発した「採血待ち時間監視システム」により、検査部の端末上で、採血の受付状況、10分ごとの採血待ち時間の推移をこれまでも瞬時にモニタリングしてきた。これをもとに城氏は、外来採血室に従事する技師を患者の状況に応じて配置しているという。従来、朝の混雑時には、30〜60分程度待つこともあったが、11台の採血台をフル稼働することにより、採血の待ち時間を15分以内に収束、TAT短縮につなげた(図1、2)。
  城氏は、1999年から臨床検査部のイントラネットを構築し、業務管理に用いた。部署ごとの業務報告、勤務表などを検査部の端末上で管理、閲覧できる。その後、採血支援システムも手掛け、患者確認、検査の依頼情報、使用した採血管情報、採血担当者名のほか、採血時の患者さんとのやりとりを書き込めるように自ら創意工夫を行った。現在は、その後発展してきた汎用の採血支援システムで運用を行っているという。

図1 時間帯別採血患者数図2 採血患者数と待ち時間


臨床検査部の次なる展望

  8月上旬、微生物検査室を移転、拡充した。遺伝子検査を充実させ、個別化医療にも積極的に対応していく考えだ。すでに肺がんのEGFR遺伝子変異、骨髄増殖性腫瘍のJAK2遺伝子変異、大腸がんのKRAS変異を見るための遺伝子検査を実施している。遺伝子検査は、コスト面など院内で行うメリットは大きいと一概には言えないが、城氏は、「大学病院は、臨床側と連携して研究していかなければならない。将来、技師の育成という面からも積極的に行っていかなければならない」との考えを示した。
血液検査担当の皆さん  患者サービスの向上に重点を置いた検査室を構築してきた城氏は、将来の展望についてISO15189取得に向けた取り組みを進めていることを明らかにした。今のところ病院側から認定取得の許可は出ていない。しかし、担当の技師を決めて、勉強会に参加している。また、取得に向けて文書管理を実施、今年4月からは月1回内部監査も実施しているという。患者サービスの向上と業務の効率化を進めつつも、大学病院としての機能アップを並行して進めている。


(The Medical & Test Journal 2013年9月21日 第1246号掲載)

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