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Vol.2静岡県・総合病院 聖隷三方原病院「微量、高速、つかいやすさ」で質向上

新開発の生化学検査装置AU5800を評価

聖隷三方原病院

静岡県・浜松市の聖隷三方原病院は、「検査の品質向上」の観点から、新開発の分析装置であるベックマン・コールターの「AU5800」を評価した。同院臨床検査部の藤田真道氏は、5月開催の「第59回日本医学検査学会」のランチョンセミナーで評価結果の一部を報告。高速機ながら1.0μLからの検体分注を実現したAU5800を、「サンプル分注試験の結果からみても、検体希釈なしでここまで微量化できるのは魅力的」と説明し、操作性の観点からも同装置は検査業務の品質向上に寄与するとの考えを示した。

聖隷三方原病院の病床数は874床、1日平均外来患者数は1174人、1日の検体数は院内と関連施設のものを合わせて約1000検体に上る。院内検査の8割が至急扱いで迅速報告しているという。同院では現在AU5400を使用しており、施設規模がAU5800に合致していることや、同県内にベックマン・コールターの開発・製造拠点があることから、今回の評価に至った。

藤田氏
藤田氏

同院ではAU5800を、操作性、装置基礎特性、試薬総合特性について3カ月間評価。セミナーでは、操作性を中心に業務品質の観点から報告した。 藤田氏は、AU5800について「随所にコンパクト化の工夫が見られる」と指摘。AU5400で別置きだったPC操作部や洗剤ボトルが、AU5800では装置内に配置されていると説明した。同時に行われた開発者の発表によると、洗剤は20Lの大容量ボトルをひとつセットするだけで全ユニットに自動供給され、長期間補充が不要という。また、新開発のラックトレー方式への変更により、多数検体の持ち運びが便利になったことや、至急ラック用の投入口が配備されたことも特徴に挙げた。

評価時の要望を反映し、操作性を向上

画面の操作性については、検査の受付時刻や結果出力時刻を表示する「検体ステータス画面」で検査時間を管理することができる点などを紹介した。また、画面遷移の快適さを向上させるため、関連する画面に直接到達できる多彩なジャンプ機能を装備しているという。

さらにキャリブレーション条件画面については、これまで1項目ずつ設定していたが、AU5800では一覧表示させ直接変更が可能になったことを紹介した。藤田氏は「実は、当初は一覧表示する画面がなかったので、当院の追加希望により実現していただいた」と説明。評価中に、同院検査部の大勢のスタッフが意見を出し合い、リクエストしたことの多くが実現されたことで、操作性がいっそう向上したと述べた。

藤田氏は、今回評価したAU5800の装置基礎特性、試薬総合特性についても今後発表していく予定だ。同装置は、微量分注ながら検体粘性に対する分注安定性も良好な結果が出ているという。「この地域にしっかりと根差し、住民に信頼される病院づくり」を運営方針とした同院。地域貢献への熱意が、品質向上への高い意識を生み出している。

  • 国際的な共有基準範囲設定へ

    市原教授
    市原教授

    当日のランチョンセミナーで座長を務めた山口大大学院医学系研究科の市原清志教授は、自身が中心となって進めている国際臨床化学連合など4団体による国際プロジェクト「臨床検査値の地域差分析と共有基準範囲の設定」について、第3回調査までに明らかとなったデータの一部を紹介した。市原氏は「すでに第4回調査を計画中であり、その時には最新の装置であるAU5800の使用を検討している」と説明した。

    同プロジェクトは、95検査項目を対象に地域差、生理的変動要因、検査値の相互関連、分子多様性、潜在病態の有病率について分析し、検査診断に用いることができるエビデンスに裏打ちされた共有基準範囲の設定を目的としたもの。日本を含むアジア10カ国、約70施設が参加し、20〜64歳の健常な医療従事者3540人の検体を、主にベックマン・コールターの中央研究室で一括測定した。市原氏は「測定法や試薬メーカーによる差を排除するため、中央一括測定にこだわった」と説明。本国際プロジェクトの特徴のひとつだとした。
    市原氏は、これまでに分析した項目のデータを紹介。標準化が可能な項目については、トレーサビリティーを確保することで、国際的な基準範囲が求められたほか、腫瘍マーカーなどの非標準化対応項目ではクロスチェックで施設ごとの値に変換する手法で、国内ではほとんどの項目で基準範囲を共有できるようになったと説明した。また、日本と海外との比較で、約3分の1の項目に地域差が見られたことから、地域別に基準範囲を設定したほか、検査値における多くの生理的な変動要因が明らかとなったことを紹介した。


(The Medical & Test Journal 2010年7月1日 第1124号掲載)

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