2015年12月21日掲載

山口県済生会下関総合病院

Vol.32小児医療に貢献する微量検体測定

Vol.32:山口県済生会下関総合病院 小児医療に貢献する微量検体測定

 山口県済生会下関総合病院(373床)は、下関地区で唯一の小児救急医療拠点病院だ。「心のかよう質の高い医療の提供」を基本理念に、地域に密着した急性期医療を進めている。地域の医療機関で小児科、婦人科の撤退閉鎖が進む中、NICU(新生児集中治療室)とGCU(継続保育室)の新生児部門と産科部門が連携して診察を行う地域周産期母子医療センターの機能強化を実施している。今年4月にはがん診療連携拠点病院に指定され、地域社会から求められる高度医療に対応する体制を整えている。また、地域の医療機関と円滑な連携を図るための病診連携室を設置し、患者さんにスムーズで適切、かつ高度な医療サービスの提供を行っている。

左から塔村、芝、楠木、米田の各氏 中央検査科(以下、中検)では、増加する検体に対応するため、ベックマン・コールター社の自動血球計数装置「UniCel DxH 800」2台と塗抹標本作製装置「UniCel DxH SMS」を連結させた「UniCel DxH 1601」と生化学自動分析装置「AU5800」(1ユニットタイプ・2台)を新たに導入し、高精度のデータを迅速に報告する体制を整えた。特にAU5800では、大量検体の処理と同時に微量検体にも対応でき、看護部から高い評価を得ている。

母子患者にやさしい検査

 赤木香織副技師長は、より迅速に検査結果を臨床側に報告するとともに、合理的な採算性を念頭に置いて業務に取り組んでいる。病院が移転して10年が経過し、新たな状況に対応するため、業務改善の一環として今回の機器の更新を行った。赤木副技師長は機器選定のポイントについて、「検体検査が集中する時間帯の迅速な検体処理と、微量検体への対応」を挙げた。患者の増加に伴う検体数の増加や、病院長からの「より早く検査結果を報告してほしい」との要望を受け、生化学自動分析装置は従来の大型機器と小型機器の組み合わせから、同一の大型機器(AU5800)の2台体制に切り替えた。そして並行して、採算性の観点から、院内で対応できる検査項目を増やすことで外注費用の削減にも努めた。
 また、NICUからの微量検体の依頼は1日当たり10~20件にもなり、従来の小型機だけでの測定では迅速対応が難しいため、臨床側からも同一機種2台体制による同一運用が望まれていた。また、今回AU5800を導入するに当たり、中検では大型機種による微量検体の測定について検討がなされた。AU5800において、微量用のサンプルカップを使用する際にデッドボリュームが極限まで少なくなるよう設定・調整を行った。測定時は患者IDを貼り付けたプレーン管に検体を載せ、一般の検体と同様に測定できるようにした。生化学担当の浜脇悠真氏は、「今までは採血量不足で、採血をやり直すことがあり、臨床の負担も大きかったが、AU5800の導入以降はほとんどなくなった」と負担軽減を歓迎している。

大幅な業務改善効果を実感

 機器の更新に伴い、検査機器のレイアウトを大幅に変更した(下図参照)。従来は、機器を壁側に設置して中央エリアで作業を行っていたが、機器を中央エリアに集約化させることでデッドスペースを無くし、作業動線の改善と業務効率の向上を実現した。特に日当直が1人で対応する夜間の緊急検体測定は、レイアウトの変更により、大きく改善されたという。
 また、外来採血業務は中検が行っているが、中央採血室の混雑緩和のため、採血の受付開始時間を30分繰り上げ8時開始とした。赤木副技師長は、「AU5800導入に伴い、分析装置の立ち上がりが早くなり、月曜日以外は特に早出の必要もなくなった」と評価している。これまで外来診療で課題とされた待ち時間は、検査報告の遅延が原因とされていたが、現在では解消され、各診療科からの問い合わせもなくなった。

再検率、目視率ともに減少

細菌検査担当の皆さん  血液検査分野では、塗抹標本作製装置が接続された血球計数装置コールターLH785(ベックマン・コールター社)と血球計数装置コールターLH750(同社)の2台運用から、「UniCel DxH 1601」に機器更新を行った。
 DxHシリーズの特徴として、最新の白血球分類技術「VCSnテクノロジー」と自動再検・標本作製プログラムである「ディシジョンルール」が挙げられる。中検では、再検や目視分類のためのルールを32種類設定しているが、血液検査担当者は、「目視は病棟検体で約20%減少、外来でも約5%減少し、再検率は病棟検体で約10%低下、外来でも約1%低下した」と述べる。TAT(検査所要時間)が、病棟検体で約3分、外来検体で約2分短縮され、作業効率の向上が図られた。特に病棟検体に対しては、再検基準が標準化されたことからコスト削減にもつながった。血液検査担当者は、「数字の上では2 ~ 3分の短縮であるが、午後は3人から2.5人体制でもできるようになった」と大幅な業務効率を指摘する。また、これらの業務改善によって、専門学会での演題検討や後輩の育成のために充当することが可能となった。また、NRBCのスキャッタプロットも表示されるようになり、NICU検体の白血球分類測定が従来と比較してより正確となり、精度の向上も実感している。
 そして、最後に機器選定の大きな理由として、ベックマン・コールター社のアフターサービスを挙げる。担当サービス員は、必ず当日対応して機器の復旧を行っており、その安心感も決め手となった。

院内感染防止対策をけん引

細菌検査室では、グラム染色や血液培養検査を24時間対応しており、菌の同定・薬剤感受性試験には、全自動微生物検査システム「マイクロスキャンWalkAway」を使用している。赤木副技師長は「中検として、抗菌薬の適正使用や院内感染防止のために病棟ラウンドにも参加し、チーム医療にも積極的に取り組んでいる」と話す。また、感染管理対策について他医療機関への指導も行うなど、地域中核病院としての重要な役割を果たしている。

(THE MEDICAL & TEST JOURNAL 2015 年12月21日第1333 号掲載)

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