第26回 「マンスリー形態マガジン」 2013年6月号

『 私の愛読書 』

前 略

  今回は私の愛読書をご紹介します。私は、数ある血液細胞アトラス書の中で、小宮正文先生が監修された『図説血球のみかた』第8版.南山堂(1988) とLudwing Heilmeyer博士が監修された『Atlas of Clinical Hematology』 second edition(1972)を愛読しております。両者の特徴として、細胞の描写が「写生(スケッチ)と写真の組み合わせ」で、前者は検査技師、後者は画家が細胞スケッチを担当しています。ともに巧妙なタッチで血液細胞を忠実に描写しており、“血液細胞の核はアズキ色”と言われておりますが、見事にそのように描写されており、私は、その色調に魅せられて当時国立大阪病院の染色法をMG染色に変更したほどでした。
  小宮先生の『図説血球のみかた』は、血液細胞の見方を小宮法の理論に基づいて細胞を解析しており、血液細胞形態学における修練のガイドブックとしても十分に利用する価値があります。また、『Atlas of Clinical Hematology』は、国立大阪病院に所属していた時に巡り合ったもので、九州に転勤する際に、国立舞鶴病院の血液内科部長の先生より、プレゼントして頂き、それ以来、私の良きパートナーとして書棚に収まっております。
  これらの素晴らしいアトラスですが、現在では絶版となっており、残念ながら一般書店では入手ができません。みなさんの中で時間がある方は、一度古書店巡りをしてみてください。このように血液学の専門書は、昔の書籍に優るものはなく、その素晴らしさは細胞画像を超越したものとして、私のバイブルとなっております。

To be continued !

草々

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 



著作権について

今回のねらい

今月は、MG染色の末梢血と骨髄像を提示しました。末梢血中に60%にまで増加した好中球に何らかの異常があるのか、もし、異常が確認された場合、如何に処理をして同定するかに迫ります。また、骨髄像では円形の核を呈する細胞を如何に同定するかに迫ってみます。
特殊染色においては、PO染色で陽性細胞と陰性細胞を認識し、不具合が生じていないかについて迫ります。PO染色における後染色はギムザ染色ですので細胞同定も可能となり、普通染色同様に分類を試みてください。

問題

CASE 1の A / B における細胞像を確認して、1 ~ 7 の細胞の同定を行ってください

1-1CASE 1

  • PB-MG×1000

  • PB-MG×1000

CASE 2 の A / B における細胞像を確認して、1 ~ 5 の細胞の同定を行ってください。また、それぞれの細胞像について所見を述べてください。

2-1CASE 2

  • (PB-PO染色×1000;Benzidine-base法)

  • (PB-PO染色×1000;Benzidine-base法)

解答・解説

  • (PB-MG×1000)Case1
    case1
    (PB-MG×1000)
    case1
  • (正解と解説)
    【正解】
    1. ⑦ 偽ペルゲルヒュエット核異常   2. ⑦ 偽ペルゲルヒュエット核異常
    3. ⑦ 偽ペルゲルヒュエット核異常      4. ⑧ リンパ球
    5. ⑩ 多染性赤芽球     6. ⑩ 多染性赤芽球     7. ⑧ リンパ球


    【解説】 

    Aは末梢血液像です。1.2.3.の細胞は、形状からは骨髄球、分葉核球、桿状核球と思われますが、核網工(クロマチン網工)は粗く、クロマチンの凝集が強いことから正常のパターンとは異なっています。この核網工の所見から、顆粒球系(好中性)の成熟障害が考えられ、偽ペルゲルヒュエット核異常と同定しました。尚、細胞質には二次(好中性)顆粒が確認できます。
    偽ペルゲルヒュエット核異常の好中球は、形状を重視するあまりに骨髄球や桿状核球と同定し、左方移動と誤判定されることがありますので十分に注意が必要です。また、4.の細胞はリンパ球に同定しました。
    Bは骨髄像です。5.の細胞は、正染性赤芽球に類似していますが、核網工は未だ粗で濃縮状ではないことから多染性赤芽球に同定しました。6.の細胞は多染性赤芽球、7.の細胞はリンパ球と同定しました。



  • (PB-PO染色×1000;Benzidine-base法)Case2
    case2
    (PB-PO染色×1000;Benzidine-base法)
    case2
  • (正解と解説)
    【正解】
    1. ② 桿状核球       2. ④ 単球          3. ② 桿状核球
    4. ④ 単球             5. ③ 分葉核球

    【解説】

    PO染色は、PO反応活性の所見から陰性、陽性と判定されますが、後染色にギムザ染色を実施することで、MG染色同様に細胞同定が可能となります。特に芽球判定には不可欠です。
    A.の細胞像は、Mc.Jukin法のPO染色です。ベンチジン誘導体を用いた方法の中では最も高感度ですが、発がん性が指摘され、薬品は発売禁止となっております。もし、使用する場合は廃液を溜めて医療廃棄物として処理することが必要です。
    A.の細胞像は、正常検体におけるMc.Junkin法(用手法)によるPO染色像で、陽性細胞は鮮やかな黄褐色の陽性反応を呈します。1.の細胞は、陽性の好中球(桿状核球)、2.の細胞は、陰性の単球となります。尚、単球は通常陰性から弱陽性を呈します。
    B.の細胞像は、MDS症例で、ベンチジン誘導体を用いたDiaminobennzidine;DAB法(キット法)によるPO染色で、陽性細胞は黒褐色の陽性反応を呈します。3.の細胞は陽性の好中球(桿状核球)、4.の細胞は陰性の単球、5.の細胞は陰性の好中球(分葉核球)となります。4.の細胞が、陰性の単球であることは問題ありませんが、5.の細胞が、陰性の好中球であることが問題であり、MDS症例で稀にみられるPO欠失(欠損)の好中球と思われます。但し、好中球について、桿状核球や分葉核球に分類する必要はありませんので一括して好中球として判定することが通常です。



これから先のページでは、医療関係者の方々を対象に医療機器・体外診断薬等の製品に関する情報を提供しております。当社製品を適正に使用していただくことを目的としており、一部の情報では専門的な用語を使用しております。
一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承ください。

医療関係者の方は、次のページへお進みください。
(お手数ですが、「進む」ボタンのクリックをお願いします)