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「ネットで形態」 マンスリー形態マガジン

問題

第54回
問題 1
末梢血の赤血球内構造物を同定して下さい。

選択細胞
@ 有核赤血球 A Cabot環 B Howell-Jolly小体
C Plasmodium D 血小板 E Pappenheimer小体



問題 2
末梢血・骨髄像の細胞同定を行って下さい。

選択細胞
@ 異型リンパ球 A 異常リンパ球 B 骨髄巨核球(裸核)
C 骨髄芽球 D 前骨髄球 E 骨髄球
F 単芽球 G 前単球 H フェラタ細胞


問題 3
骨髄像から設問に答え下さい。

【60-65歳.男性】
RBC217/μL,Hb6.5g/dL,Ht19.9%,
MCV92fL,MCHC32.2%,
WBC6,600/μL,PLT34.6万/μL
【3-8歳.女児】
RBC212/μL,Hb7.3g/dL,
Ht19.0%MCV89.6fL,MCHC38.4%,
WBC3,700/μL,PLT25.3万/μL

設問
設問1. 貧血の分類を行なって下さい。
設問2. 骨髄像の細胞所見を述べて下さい。
設問3. 検査所見に求めるものは何ですか。
設問4. 予測される臨床所見は何ですか。
設問5. 最も考えられる疾患とそのポイントは。



今回のねらい

今回は末梢血液像および骨髄像の細胞同定と光顕的診断に挑みます。
末梢血液像では赤血球形態より赤血球内構造物と骨髄像も入れて類似した鑑別細胞を出題しました。
症例では血算値と骨髄像からいくつかの設問を掲げ、診断までのプロセスを考える問題を出題しました。



解説

問題 1

(正解と解説)
末梢血液像にみられる赤血球内構造物(封入体)についての出題ですが、類似する形態像には鑑別が求められます。まずは普通染色の所見を捉えましょう。

【正解】

(CASE A) B.Howell-Jolly小体、(CASE B) E.Pappennheimer小体、(CASE C) C.Plasmodium
(CASE D) A.Cabot環、(CASE E) D.血小板、(CASE F) @.有核赤血球

【解説】


1)A.とB.は鑑別を要する細胞です。
A.は核の遺残物が直径1μm程度で円形を呈し、通常1個の赤血球に1つの赤紫色の顆粒状物質として認めます。B.は鉄を含有する赤血球とされ、通常1個の赤血球に複数の赤紫色の顆粒状物質として認めます。鑑別には鉄染色を行い、B.は青色に染まりますが、A.は染まりません。

2)C.とD.とE.は鑑別を要する細胞です。
C.は赤血球内に環状体で淡いピンク色の斑点を有するマラリア原虫が寄生したものです。
これらの斑点はシュフナー斑点ともよばれますが、なかには分裂体や生殖母体がみられる場合もあります。本例は三日熱マラリアでみられたものです。D.は環状または8の字状の構造物としてみられるカボット(Cabot)環です。末梢血の出現頻度は少ないのですが、悪性貧血、白血病、鉛中毒、摘脾後にみられるようです。E.は赤血球の上に血小板が乗ったものです。マラリア原虫と類似しますが、血小板の周囲が白く抜けた様にみえることが鑑別のポイントのようです。

3)F.は有核赤血球すなわち赤芽球(正染性)ですが、多染性赤芽球になると小リンパ球との鑑別が必要です。共に核が中心性を取ることに原因があるようですが、クロマチン網工は異なりますのでそれを鑑別ポイントとしてしっかり捉えるようにします。


問題 2

(正解と解説)
末梢血液像と骨髄像にみられる類似する白血球の形態像を出題しました。普通染色における所見のポイントを掲げましたので挑戦してみて下さい。

【正解】

(CASE A) 1-D.前骨髄球、2-H.フエラタ細胞(CASE B) 1-A.異常リンパ球、2-B.骨髄巨核球(裸核)(CASE C) 1-F.単芽球、2-@.異型リンパ球(CASE D) 1-A.異常リンパ球、2-A.異常リンパ球

【解説】

(PB/BM-MG ×1000)
(CASE A) 1.と2.の鑑別所見は、@細胞質辺縁、A核の位置、B核網工、Cアズール顆粒の性状です。
  • 前骨髄球は、細胞質辺縁は規則性、核は偏在性(ゴルジ野の発達)、核網工は粗網状で核小体を有し、アズール顆粒は円形の大型で均一です。
  • フエラタ細胞は、細胞質辺縁は不規則性、核は中心性、核網工は繊細網状で核小体を有し、アズール顆粒は長形や短形で不均一です。核小体は認めますが、これ以外の所見はすべて異なります。本細胞は現在使用されていませんが骨髄では稀にみられます。私見としては非造血細胞群と考えております。大きさは共に約23μm大のようです。
(PB/BM-MG ×1000)
(CASE B) 1.と2.の鑑別所見は、@核形不整、A核網工、B周囲の状況です。
  • 異常リンパ球は、核形不整として核内への切れ込み(立体的)がみられ、クロマチンは増量し、核網工は粗剛で、周囲には同じような細胞が増加していて単一様式(腫瘍性)がみられます。本例はATL細胞です。
  • 骨髄巨核球(裸核)は、軽度の核形不整はあるものの平面的で、核内への切れ込みはみられず、クロマチンは増量していますが、ATL細胞ほど強くないようです。
    周囲には僅かにみられるほどで、通常は細胞の周囲に1個か2個の血小板が付着していることがよくみられます。末梢血に稀に出現する裸核の巨核球には要注意です。大きさは共に約19μm大のようです。
(PB/BM-MG ×1000)
(CASE C) 1.と2.の鑑別所見は、@核の形状、A核網工、B核小体、C細胞質、D周囲の状況です。
  • 単芽球は、核はほぼ円形で、核網工は2.に比べやや繊細で、大きな核小体を有し、細胞質は弱好塩基性で、周囲には同じような細胞がみられ単一様式(腫瘍性)がみられました。
  • 異型リンパ球は、核は類円形で、核網工は粗剛で、核小体は認めず、細胞質は強好塩基性を呈し、周囲には形質細胞様のものも含め多彩様式(反応性)がみられました。大きさは共に約22μm大のようです。
(PB/BM-MG ×1000)
(CASE D) 1.と2.の鑑別所見は、@核の位置、A核網工、B核小体、C細胞質、D周囲の状況です。
  • 異常リンパ球は、20μm大で、核偏在性、核網工は 2.に比べやや繊細傾向、核小体を認め、細胞質は強好塩基性で空胞を認め、周囲には同系の細胞が散見されました。
    本細胞は形質細胞の未熟型として形質芽球に同定しました。成熟型の形質細胞は、核偏在と核周明庭(ゴルジ野)が明瞭で、核小体を有しないことがポイントになります。
  • 本細胞は異常リンパ球なのですが、異型リンパ球としての要素も加味しており、核はほぼ中心性、核網工は粗剛、核小体は認めず、細胞質は弱好塩基性で、アズール顆粒を認めます。
    異型リンパ球にもアズール顆粒を認めることはありますが、本細胞は、末梢血に単一様式がみられました。従って、本細胞は約30μm大の大型顆粒リンパ球として捉えることになりますが、骨髄でも増加しており、アグレッシブNK細胞白血病と診断された例です。本疾患は予後不良とされますので、大型の異型リンパ球で顆粒を有する細胞には注意を払うことになります。

問題 3

【正解と解説】

(BM-MG ×400)

(BM-MG ×400)

設問1. 貧血の分類を行なって下さい。
赤血球指数による分類から迫りますと、A.は、MCV91.7fL、MCHC32.7%より正球性正色素性貧血になります。B.は、MCV89.6fL、MCHC38.4%より正球性正色素性貧血になります。双方ともに高度の貧血症のみが特徴のようです。

設問2. 骨髄像の細胞所見を述べて下さい。
A.は、顆粒球系はみられますが、赤芽球系がみられず、M/E比は高いようです。顆粒球系では好中球あたりに、二核や輪状核の形態異常がみられます。全体としては、何らかの原因により赤芽球が抑制されたものと思われます。
B.は、巨大な幼若赤芽球が散見されますが、成熟赤芽球がみられません。幼若赤芽球は前赤芽球と思われますが、それにしては巨大化し過ぎます。何らかの原因により残存する前赤芽球が変貌し巨大化になったものと思われます。
双方ともに、形態学的にも赤血球系のみに異常が発生したことが考えられます。

設問3. 検査所見に求めるものは何ですか。
双方ともに、正球性正色素性貧血のもと、骨髄の赤芽球の抑制より網赤血球の減少が伺えます。形態学的所見より赤芽球癆を疑い、鉄代謝では、血清鉄の増加、総鉄結合能(TIBC)に変化はなく、血清フエリチンの増加、血清・尿中エリスロポエチンの増加などが予測されます。

設問4. 予測される臨床所見は何ですか。
赤芽球癆を疑うことで、A.は慢性型にみられる胸腺腫が原因によるもの、Bは急性型にみられるヒトパルボウイルスB19感染が原因として考えられます。A.は胸腺腫の50%前後でみられ、このうち30%前後が胸腺摘出で治癒されるとされ、胸腺が関わることから自己免疫機序が関与することが考えられます。B.は小児例でみられ、顔面に平手打ち様紅斑(蝶型紅斑)を特徴としてリンゴ病とも言われます。

設問5.最も考えられる疾患とそのポイントは。
赤芽球癆は幹細胞から前駆細胞への分化障害または前駆細胞自体の障害と考えられます。
先天性と後天性に分けられ、前者にはDiamonnd-Blackfan症候群、後者には慢性型として主に胸腺腫が、急性型には溶血性貧血に併発するもの、ウイルス感染によるもの、薬剤によるもの、膠原病によるものがあるようです。
本例は、A.は胸腺腫によるもので、B.はヒトパルボウイルスB19感染によって発生した形態変化です。本ウイルスは、赤血球系の造血前駆細胞への感染によって発生したもので、前赤芽球の巨大化が特徴です。A.は胸腺摘出術後、B.はウイルス感染治癒後に貧血症は改善され、骨髄の赤芽球は復活し、周囲には黄色の赤血球(古い赤血球)、と多染性の赤血球(新生の赤血球)が混在してみられました。



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