第79回 「マンスリー形態マガジン」 2017年11月号

『 初めての経験、空中ヒヤリ・ハット 』    

  まあ、二度と味わいたくない“ヒヤリ・ハット”と“インシデント”を同時に経験しましたので紹介します。
9月17日名古屋での仕事を終え、帰路のため18日中部国際空港午前9時05分発のANA435便(ボーイング737-500型機)福岡行きに搭乗しました。いつものように窓側の予約席に座り、9時16分の離陸とともに爆睡し始めた矢先のことでした。離陸数分後、水平飛行に気づき、外界をみると名古屋港の上空を旋回している様子、その直後、客室乗務員による“機内に異臭発生がしたため中部空港へ緊急着陸します”のアナウンスにびっくり、心臓はバクバクでしたが唯々平然を装っておりました。実は私、極度の高所恐怖症で、機内ではいつも爆睡するように心がけ恐怖心から少しでも逃れようとしています。しかし、それはもう何十年も続いておりますが‥(笑)。
  9時27分に無事着陸しましたが、滑走路には消防車が4台、出口には警察官が10人ほど待機しており、それは物々しい雰囲気でした。テレビでたまに見るシーンそのものでしたが、乗客乗務員131名は全員無事で乗客の方も落ち着いていました。機内の異臭にきづいた客室乗務員が機長へ連絡したそうで、その後原因調査に時間がかかり午後1時15分発の便に変更になり、食事代が準備され約4時間の待機となりました。
昨夜は台風18号が名古屋を通過したこともあり、運航確認のため早朝(午前7時)より空港へ出向いており、結局、帰宅したのが午後4時30分頃でしたから、約8時間30分の長旅びとなりました(名古屋が遠~い!)。
  ネットでその原因を知ったのは19日、ANAの調査では機体に異常はなく、“エンジンに付着したオイルなどの汚れが異臭となりエアコンを通じて客室内に流れ込んだ可能性がある”と発表してましたが、これって“インシデント”ではありませんか。それにもう1つ、食事をするため許可を得て外へ出たのですが、再搭乗の際チケットを再提示するように言われたので、チケットを金属探知機にかけたところアラームは鳴るわ、赤い警告用紙は出るわ一時騒然、係員がかけつけ対応はできたものの数分間は停止状態、私の予想通り連絡が届いていなかったようです(度重なる不祥事にキレそうでした!)。
ヒヤリ・ハット に加え整備点検の不備と緊急時の連絡ミスによるインシデントにショックは隠し切れませんでした。 ヒヤリハットはまだまだ続きます、最近は“空からの落下物”、地上ではヘルメットの着用が義務づけられそうです。我々は患者さんの“命を守り” 航空会社は“命を運ぶ” 仕事、いずれも“すみません”はまかり通りません!

(イラスト:唐仁原彩瑛さん)

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 



著作権について

今回のねらい

 今回は、骨髄の細胞同定と形態診断に挑みます。
細胞同定は骨髄でよく遭遇する細胞と類似細胞を提示しました。鑑別を要するポイントを捉え同定してみて下さい。
  症例編は、僅かな臨床および検査所見と、末梢血のMG染色、骨髄のMG染色、それにリンパ節スタンプ標本のMG染色から形態診断を試みて下さい。また、確定診断に必要な所見ならびに本型と類似する疾患を考え、その鑑別ポイントについても述べて下さい。

問題

骨髄の細胞同定を行なって下さい。

1-1<設問1>

  • BM-MG.1000

  • BM-MG.1000

  • BM-MG.1000

  • BM-MG.1000

  • BM-MG.1000

  • BM-MG.1000

  • BM-MG.1000

  • BM-MG.1000

末梢血・骨髄像より考えられる疾患と鑑別疾患のポイントは何ですか。

2-1<設問1>

【所見】
【60-65歳.男性】
主訴:全身倦怠感(+)、リンパ節腫大(+)、肝脾腫大(軽度)
WBC5,300/μL、RBC258万/μL、Hb7.2g/dL、Ht24.3%、PLT22.4万/μL、NCC5.2万/μL、TP9.5g/dL、LD420U/L、Ca8.7mg/dL、矢印細胞の出現(PB.2%,BM.6%)

  • PB-MG×1000

  • BM-MG×400

  • BM-MG×1000

  • LN-MG×1000

解答・解説

問題 1

(正解と解説)
   骨髄の類似細胞を提示しましたので、鑑別ポイントを明確にして同定を試みて下さい。細胞径は15~25μm大の細胞になります。

【正答】

(Case A) 前骨髄球
(Case B) 前単球
(Case C) 形質細胞
(Case D) 巨赤芽球(多染性)
(Case E) 低分葉核巨核球(小型)
(Case F) 形質細胞
(Case G) 細網細胞
(Case H) 幼若好酸球

【解説】

(BM-MG ×1000)
A
B
C
D
E
F
G
H
(Case A)
細胞質の11時方向にゴルジ野相当(○印)部分がうかがえ、それは旺盛で核を辺縁に押しやるほどです。
細胞質は好塩基性で粗大なアズール顆粒を有し、核のクロマチンは粗顆粒状で核小体(矢印)がみられることより前骨髄球に同定しました。本細胞はムコ多糖体が豊富でアズール顆粒を引きつけると言われます。

(Case B)
中等度の好塩基性の細胞質は辺縁がやや不規則性で、微細なアズール顆粒を有し、顆粒質と硝子質の二重構造(矢印)がうかがえます。核縁は不規則性でクロマチンは繊細で核小体が数個みられるようで前単球に同定しました。本細胞は、前骨髄球と鑑別を要します。

(Case C)
これらの細胞のなかでは唯一小型になります。細胞質の好塩基性は強く、2時方向に僅かにゴルジ野(白い領域)がみられ、核は偏在しています。クロマチンは凝集状で、成熟リンパ球様として形質細胞に同定しました。

(Case D)
一見Case C.に類似していますが、まずは大型であることが異なります。さらに、細胞質は多染性の色調で核はほぼ円形、クロマチン網工は粗顆粒状で赤芽z球を思わせます。それは、細胞質の成熟(多染性)に対し核の成熟が遅れていることがうかがえます。従って、多染性赤芽球性の巨赤芽球様変化として捉えました。

(Case E)
本系統の正常サイズを100μm大とすると本細胞はかなりの小型です。細胞質辺縁の不規則性と豊富なアズール顆粒そして細胞膜に付着した血小板( ? )を思えば、血小板産生能を有した小型巨核球になります。しかし、核の低分葉は形態異常であり、MDSの5q-症候群に出現しやすい低分葉核の小型巨核球に同定しました。本例は5q-症候群ですが、CMLや他の疾患でも散見されることがあります。


(Case F)
本細胞はCase E.に類似しますが、細胞質辺縁が鮮明で好塩基性を有し小さいながらも空胞がみられることが異なります。核の周囲には僅かながらにゴルジ野の発達により核は偏在しています。
クロマチンは凝集塊もみられ、全体像から形質細胞に同定しました。


(Case G)
大型細胞で中等度の好塩基性の細胞膜の辺縁が不鮮明で、核は円形でクロマチンが粗網状です。
細胞質の不鮮明さ(矢印)は血液細胞を除外し、リンパ球に類似した細網細胞に同定しました。


(Case H)
本細胞も大型ですが、細胞質の辺縁が鮮明であることは血液細胞を思わせます。
細胞質の色調はダークブルーの好塩基性(?)が強く一部に赤紫色の顆粒が散布しています。核周の6時あたりにゴルジ野がみられ、核偏在のことより前骨髄球の段階を考えます。ただ、細胞質の独特な塩基性の色調は特に幼若な好酸球でみられる主要塩基性蛋白(MBP*)の産生 の旺盛さがうかがえます。
MBPは寄生虫の駆除という大きな働きをしますが、自らは組織傷害を起しアレルギー反応を導くとされます。




問題 2

   60歳代の男性例。全身倦怠感を主訴に来院し、貧血を指摘され、精査のため骨髄穿刺が施行されました。

【解説】

(PB-MG×1000)
問題2
(BM-MG×400)
問題2
(BM-MG×1000)
問題2
(LN-MG×1000)
問題2

【末梢血液像所見】(A図)
   白血球正常(5,300/μL)の血液像でリンパ球様細胞(矢印)が2%みられました。それは25μm大の大型で、N/C比は低く、核は偏在し、核のクロマチン網工は粗剛で明瞭な核小体(赤色矢印)がみられ、細胞質は好塩基性が強く(特に辺縁)小さな空胞がみられます。形態像から形質細胞を疑いますが、核小体が明瞭であることより形質芽球も考慮すべきかと思われます。また、背景には赤血球の連銭形成がみられます。

【骨髄像所見】(B図)(C図)
   低形成の骨髄(5.2万/μL)ではリンパ球様細胞(矢印)が6.0%みられました。それらは16μm大の中型で末梢血でみられた形態とは多少異なるようです。ただ、核偏在性と強度の好塩基性は類似しそうで、形質細胞類似のリンパ形質細胞性リンパ球(lymphoplasmacytic lymphocyte:LPL)を疑いました。背景には赤血球の連銭形成が顕著です。

【リンパ節生検所見】(D図)
   リンパ節生検スタンプ標本のMG染色ですが、骨髄に類似した形質細胞様リンパ球が増殖しているようです。
   ちなみにHE染色病理学的所見は、小型もしくはそれより大型の成熟リンパ球と形質細胞のびまん性増殖を認めるというコメントでした。腫瘍細胞の免疫染色では細胞質質内にk鎖(軽鎖)が陽性でした。

【生化学・血清検査】
    血清総蛋白、LD、Caの高値、血清IgM高値(3.2g/dL)、M蛋白(+)

【表面形質】
   細胞質内免疫グロブリン(IgM)陽性、panB抗原(CD19・20・22)陽性、CD38・138陽性

【臨床診断】
貧血を主訴に、リンパ節をはじめ骨髄、末梢血にLPLの増加、B細胞の証明さらに血清IgMの増加などからリンパ形質細胞性リンパ腫と診断されました。本疾患でM蛋白がクリオグログブリン活性を有している場合はクリオグロブリン血症を呈し、粘稠度によるRaynaud(レイノー)現象より末端部の手足のしびれにつながることがあります。
これは4℃にて発生するもので末梢血にクリオグロブリン(球体)が出現し、血算機で血小板や白血球などの偽高値を呈するので、その場合37℃で温めて固まりを解離した後に再測定を行います。わが国の発生は全非ホジキンリンパ腫の0.7%(欧米は1.2%)と言われ、低悪性度に分類されます。



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