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「ネットで形態」 マンスリー形態マガジン

第82回 「マンスリー形態マガジン」 2018年2月号

『桜島に野望を抱いた吉之助少年』

  今年は明治維新から150年を迎え、それにふさわしくNHK大河ドラマは明治維新の立役者、薩摩(鹿児島)藩士西郷隆盛の生涯を描いた「西郷(せご)どん」(1月7日放映)で幕が開けました。原作は林真理子さんで、語りは西田敏行さんです。西田さんは大河ドラマ「翔ぶが如く」(1990)で西郷隆盛を演じた俳優さんでもあります。
  さて、西郷隆盛像を一言で語ると、三度死んで、二度の島流し、三度の結婚を経て、徳川幕府を転覆させ明治維新を成し遂げたことになるでしょうか。しかし、最期は明治維新政府を相手に逆賊と呼ばれ命を散らす波乱の生涯であったとも言われます。
  下級藩士であった西郷家の長男として生まれた西郷吉之助少年のそばには幼友達の大久保正助(大久保利道)がいました。共に薩摩藩主の島津斉彬に仕え薩摩藩を盛り立て、後に政府の革命家として共に活動しますが、大久保は政治家としても優れた才能を発揮し、日本を国家として確立させるために権力闘争や試行錯誤を重ねていました。一方、西郷は駆け引きも必要な政治家には不向きだったようで、武士としての誇りや個人の想いを大切に薩摩へ戻り、政府から距離を置くようになり、両者の間に溝ができる格好となります。
明治10年に勃発した西南戦争によってお互いに敵味方のトップとして争うことになり、倒幕を図る西郷を大久保は説得させるも政府の反対もあり、結局二人は直接会話することなく、西郷は薩摩の地で最期を迎えることになります。
  今回も豪華なキャストが揃い踏みです。西郷は身長178cm、体重100kgの大男と言われ、隆盛役の鈴木亮平さんはそれにふさわしい俳優さんです。他に大久保利道(瑛太)、渡辺謙(島津斉彬)、北川景子(篤姫)、二階堂ふみ(愛加那:二度目の奥方)岩山糸(黒木華:三度目の奥方)‥と続きます。それに西郷と木戸孝允(長州藩)との薩長同盟に仲立ちした永遠のヒーロー坂本龍馬役を誰が演じるのか興味深いところです。
  幕末のドラマは幾多ありますが、日本の夜明けを待ち望んだ志士たちのロマンは、現代人を引きつける計り知れない夢を持ち合わせていたのでしょう。

参考資料:NHK大河ドラマ・ガイド.2018

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


問題

問題 1
末梢血液像の白血球分類で以下のことが発生しました。
その捉え方や対処法などを考えてみて下さい。

  1. 病態に変化がみられない高齢の患者さん
    白血球数が6,700/μL、白血球分類で リンパ球を82%として報告しました。
    主治医よりクレームの電話がありました。何が起り、検査室の取るべき対処法は何ですか。
  2. 高齢で悪性リンパ腫の患者さん
    白血球の分類でグンプレヒトの核影が多くみられました。検査室のとるべき対処法は何ですか。
  3. ヘアリー細胞白血病(HCL)の患者さん
    強制乾燥塗抹染色標本からヘアリー細胞をみつけることは可能でしょうか。
    もし、可能であればその対処法は何ですか。
  4. くすぶり型ATLの患者さん
    他院より紹介され、白血球分類で異常所見がなく、3年後に急性型ATLと診断されました。
    急性転化前に検査室で着眼するポイントとその対処法は何ですか。
  5. 免疫グロブリンが増量している患者さん
    血液像に白い球状物質が多数みられました。検査を進めるなかでその対処法と考えられる疾患は何ですか。



問題 2
形態診断に必要な所見を考え、臨床診断を行なって下さい。

【2-5歳.男児】 主訴:食欲不振・腹部にしこり   現病歴:腹部膨満
検査:WBC4,800/μL、RBC404万/μL、Hb10.5g/dL、Ht33.4%、PLT27.8万/μL、BM-NCC18.5万/μL、LD6,296IU/LPO染色(−)
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  • PB-MG×1000
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  • BM-MG×400
  • 拡大
  • BM-MG×1000
  • BM-PAS×1000    BM-ACP×1000
  • 拡大




今回のねらい

  今回は、末梢血液像の観察で注意するべき所見と形態診断に挑みます。
末梢血では、人為的な採血、塗抹、乾燥、染色の工程が行なわれるため、白血球分類ではアーテイファクト(人工産物)の出現を認識しておく必要があります。
その場合、それらの対処法を習得し、臨床診断に支障のないようにする必要があります。日常よくみられる実際例を掲げましたので、その対処法を考えてみて下さい。
  症例編は、わずかな臨床像と検査データから次なる検査を模索し、末梢血および骨髄像の形態診断を行なって下さい。



解説

問題 1

   末梢血液像の白血球分類で発生した事項を如何に捉え、その対処法についての問題です。

【解説】

1.
自覚症状のない高齢の患者さんの例で、白血球数が6,700/μL、白血球分類にて リンパ球が82%と増加し、絶対数では5,494/μL(基準;1,500-4,000/μL)でした。主治医からクレームがついたということは臨床像に反したデータであったと解釈します。実は、新任技師が白血球分類を行ったものですが、塗抹の辺縁部に集合した好中球や単球を見抜けず中央部に存在するリンパ球のみを規定のルール(辺縁部は禁忌領域)に従い分類した結果のものです。先輩技師が細胞の片寄りを見つけ、再度塗抹を行い分類するとリンパ球32%(2,144/μL)の基準値が得られました。インシデントとして取り上げられたものですが、日頃から、白血球数と細胞分布の相関はある程度認識しておくことが必要です。

2.
高齢で悪性リンパ腫の患者さんの例です。白血球分類でグンプレヒトの核影が多くみられました。この核影は人工的なものと思われますが、多くはリンパ球にみられ、なかでも腫瘍性を帯びたリンパ球(異常リンパ球)に著しいようです。これは白血球の100分類に影響を与えますので、対処法としては細胞の壊れを回避するためにアルブミン1:9血液(EDTA添加)を混合し塗抹標本を作製することで回避できると思われます。

3.
ヘアリー細胞白血病(HCL)の患者さんの例です。本型で特徴とされるヘアリー細胞を見つけるには自然乾燥で標本を作製することです。ただ、わが国では多くは強制乾燥がなされますので、その場合“目玉焼き状”の形態として観察されます。もし、強制乾燥標本でヘアリー状を観察する場合は塗抹の引き始め部分(通常は禁忌領域)が最適になります。これは引き終わりに比べ乾燥の度合いがゆるいため自然乾燥に近い状態にあることが推測されます。

4.
くすぶり型ATLの患者さんで、3年後に急性型ATLと診断された例です。
くすぶり型ATLは血球数に変化はなく、末梢血液像の出現も少ないために検査室側では目視法の100分類中に素通りする可能性があります。臨床側は患者の病態情報を持ち合わせていても、電子媒体による検査依頼の今日、検査室側にはその情報は流れてきません。臨床側より検査室への電話対応などによって解決できるように思えます。

5.
免疫グロブリンが増量している患者さんの例で、血液像に白い球状物質が多数みられました。これはクリオグロリンです。本例はIgM型M蛋白が証明されたリンパ形質細胞リンパ腫(従来のマクログロブリン血症)の例で、4℃でゲル化し、37℃で再溶解する異常免疫グロブリンです。このゲル化した球体は自動血球計数装置では血球数の偽高値を呈するため、37℃で解離した後再検査することが求められます。



問題 2

   男児で、腹部膨満がみられ、貧血(Hb10.5g/dL,MCV82.6fL)を呈した例です。LDは高値(6,296IU/L)でした。

【解説】

(PB-MG×1000)

(BM-MG×400)

(BM-MG×1000)

(BM-PAS×1000    BM-ACP×1000)


【末梢血】

芽球様細胞が2%みられ、異型リンパ球が15%みられました。


【骨髄】
正形成(18.5万/μL)の骨髄では芽球様細胞が82%と増加していました。それらの一部に偽ロゼット形成を呈するものが散見されました。それらは20〜30μm大で、N/C比はやや高く、クロマチン網工は繊細網状、核小体は不明瞭でした。PO染色、PAS染色、EST染色は陰性で、ACP染色は顆粒状の陽性を呈していました。周囲には核影が散見されましたが、おそらく芽球様細胞の破壊したものと思われます。
細胞形態(繊細なクロマチン網工、核影、偽ロゼット形成)から癌細胞の骨髄転移を疑い腫瘍細胞として検査が進められました。


【腹部膨満検索】
CT、骨シンチグラフイより右副腎腫瘤摘出(径6x4x2.5cm,27g)術が施行されました。


【他の検査】
尿中VNA1.8mg/day(1.3-5.1)、尿中HVA70.2mg/dL(1.5-6.6)
尿中カテコールアミン3分画:アドレナリン4.6μg/day(3.0-15.0)、ノルアドレナリン26.2μg/day(26-121)
ドーパミン3043.1μg/day(190-740)


【臨床診断】
患児の腹部膨満はCTや骨シンチグラフイから右副腎腫瘤によるものとされ、摘出した腫瘍細胞や尿中カテコールアミン代謝物質の異常から神経芽細胞腫と診断され、骨髄をはじめ遠隔転移がありstageWと診断されました。腫瘍細胞は骨髄への転移をはじめ末梢血にも出現していたものと思われます。
本型の腫瘍細胞は非上皮性結合をとるため、その集塊の強さは上皮性結合に比べ軽度であるので、孤立性をとると急性リンパ性白血病(ALL)との鑑別を余儀なくされます。ALLは免疫形質で、本型は好発部位である副腎や後腹膜腫瘤の確認や尿中カテコールアミン代謝産物などの動向が鑑別になるようです。



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