第86回 「マンスリー形態マガジン」 2018年6月号

『Byun先生との絆』

  4月13日から15日にかけて仲間9名と韓国のソウルへ出かけました。私にとっては20年来の友人であるByun Dae Hoon(邊大勲)先生の表敬訪問も兼ねてました。Byun先生との出会いは、20年程前に全国血液研修会が長崎で開催された時に日臨技が韓国から招聘されたことに始まります。
  Byun先生は当時、韓国臨床病理士協会の副会長として、総務担当のLee Boo Hyung先生とご参加下さり、研修会終了後のチョットしたフレンドシップがきっかけで交流が始まりました。
  その後、Byun先生を博多シンポジウムの講演(2000)に招聘し、私が韓国へ講演(2001・2005)に招聘され、さらに親交を深めました。それ以来、Byun先生とは毎年、互いの誕生日にはメッセージを交換しております。
  今回は、Lee先生やShim Moon Jung先生も同伴され、再会に話がはずみました。
  Byun先生は韓国の高麗大学時代、韓国のボス的立場の先生で、輸血や血液学専門書を出版し、私より3歳年上の尊敬する“elder brother”です。我々が出版した「形態学からせまる血液疾患」(1999)は先生のお力で韓国版としても出版されました(2003)。Lee先生は高麗大学在職以後、ご自分で会社を立ち上げ、また医学博士を取得するなど優秀な先生で、彼曰わく、今度は私が“elder brother”となっているようです。Shim先生は美人教授、博多シンポジウム(2010)にも講演され、“日本好き”で優しくて笑顔がとても素敵な先生です。
  Byun先生との交流がきっかけで、私が九州がんセンター退職1年目に当センターで韓国の大学の保健科学先攻の教授や副教授10名を招聘し、「Korea-Fukuoka Hematology symposium」(通称、幸福シンポジウム.2008)を開催したことがあります。通訳の方曰わく、韓国の諸先生が日本での研修会に参加することは前代未聞のことのようでした。 来年、今度は我々が三人の先生を日本のどこかで“おもてなし”を計画しておりますが、福岡は韓国と近隣国でもあり、後進と共に更なる交流を深めて参りたいと思っています。

(資料:日本花の会:桜図鑑)

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


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今回のねらい

  今回は血液像の観察で注意すべき所見と形態診断に挑みます。
細胞編は、末梢血で見逃してはいけない細胞もありますので特徴的な所見を捉え同定しましょう。
症例編は、わずかな臨床像と検査データから次なる検査を模索し、末梢血および骨髄像から形態診断を行なって下さい。

問題

末梢血液像の細胞同定を行なって下さい。

1-1<問題1-A>

1-2<問題1-B>

1-3<問題1-C>

1-4<問題1-D>

形態診断に必要な所見を考え、臨床診断を行なって下さい。

2-1<設問1>

【所見】
【60-65歳.男性】
【主訴】貧血、出血斑 【検査】WBC7,300/μL、RBC269万/μL、Hb9.4g/dL、Ht27.8fL、PLT3.9万/μL、【骨髄】 NCC46.5万/μL(芽球様38.0%) 

  • PB-MG×1000

  • BM-MG×400

  • BM-MG×1000

  • BM-PO×1000

解答・解説

問題 1

   末梢血液像の細胞同定を行なって下さい。

【解説】

 






【解説】

末梢血液像で鑑別を要する細胞のなかで、腫瘍性の細胞も取り入れてみました。

【正答】
A-1.分葉核球  2.リンパ球  3.リンパ球  B-1.リンパ球  2.リンパ球  C-1.芽球  D-1.異常リンパ球  2.異常リンパ球

【解説】
A-1.核のくびれ(7時方向)とクロマチンの結節が強いことより分葉核球に同定しました。2.はN/C比が低く、核は類円形で、クロマチン網工は粗荒で平坦状、細胞質は淡青色で、アズール顆粒が散見されることよりリンパ球(顆粒リンパ球)に同定しました。3.は2.と同様で顆粒リンパ球に同定しました。

B-1.上述したものと同様に顆粒リンパ球に同定しました。2.は大きさが16μmを超えることで異型リンパ球に同定したいところですが、異型リンパ球は抗原刺激などによって、大型化のほかに細胞質の好塩基性が特徴であり、本細胞は淡青色であることから大リンパ球に同定しました。

C-1.細胞径23μm大の大型で、N/C比が高く、核形不整は軽度、核小体は明瞭、好塩基性の細胞質には顆粒が僅かに存在します。通常、正常の芽球には(アズール)顆粒を有しないと言われますので、本細胞は腫瘍性の芽球が想定されます。光顕的にはまずはPO染色の反応を確認し、骨髄穿刺における芽球の割合、それに伴う表現型や染色体・遺伝子などの検索を進めることになります。

D-1.2.細胞径15μm大の中型リンパ球のようです。核形不整が顕著でいわゆるクローバー状、核は若干の盛り上がり状で、異常リンパ球としてATL細胞を疑います。この核形不整は採血後の検体の経時的変化でもみられますので、その場合は、核全体が平坦状を呈することで異なります。



問題 2

   10-13歳.男性。発熱と紫斑を主訴として来院されました。来院時の検査データで白血球数と血小板数の著減、そしてDIC所見が特徴です。

【解説】

(PB-MG×1000)

(BM-MG×1000)

(BM-MG×1000)

(BM-PO×1000)


【末梢血】

(A)白血球数著減(800/μL)のなか、大型細胞に核形不整と微細顆粒を有するものが散見されました。右図は細胞質の好塩基性と核網工がやや粗荒気味で異型リンパ球を思わせますが、核形不整が合致しません。
俗に言う“亜鈴状”核は本細胞の特徴とされ、左図のような微細顆粒も重要な所見で、異常の前骨髄球(APL細胞)として捉え検査を進めます。(APL:acute promyelocytic leukemia)

【骨髄】
(B)低形成の骨髄は辺縁周辺にAPL細胞が83%と増加していました。大型で核形不整や豊富な顆粒を有する細胞が目立ちます。

(C)APL細胞にはアウエル小体を有するものがみられ、なかにはファゴット細胞(束状のアウエル小体を有する細胞)も散見されました。

(D)PO染色では、細胞質一面に強烈な陽性(ベタッとした染まり)がみられ、APL細胞であることを裏付けます。

【免疫形質】
CD13・CD33の発現(CD33が強い)、HLA-DRは陰性でした。

【染色体/遺伝子】
t(15;17)/PML-RARA遺伝子が証明されました。

【臨床診断】
末梢血・骨髄像の光顕的所見からPO反応強陽性のAPL細胞として、さらにCD13・33陽性・HLA-DR陰性、15;17転座・PML-RARA遺伝子の証明によって急性前骨髄球性白血病(APL)と診断されました。
骨髄の低形成はおそらく過凝固状態によるもので、また凝固系は正常で、線溶系先行のDICがみられ本例の特徴とされます。末梢血の白血球数著減の場合は低倍率で全視野を観察し、異常所見の有無を確認することが重要になります。本例はATRA(オールトランスレチノイン酸)療法による分化誘導法により寛解に導入しました。



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