第91回 「マンスリー形態マガジン」 2018年11月号

『山津波、塩害そして桜開花 ?』

   猛暑日が続いた災害列島日本に、今年も北海道胆振(いぶり)東部地震や数多くの台風の襲来が大きな被害をもたらしました。胆振東部地震(2018.9.6,震度7)では、厚真町で“山津波”が発生し、それは時速50キロ、約6秒で集落を飲み込む勢いだったそうで、多くの方が亡くなられました。
  只今、10月6日午前9時10分、台風25号が福岡県全域を暴風域に巻き込み北北東へ進行中、わが家の糸島周辺は風速30m/s、裏山の竹藪が大きく揺れています。今年は台風の当たり年のようですが、ここ数年福岡への接近は少なく難を逃れていましたので、久しぶりに恐怖を味わっております。昨年から雨男復活の私には、名古屋、沖縄、高知と台風につきまとわれております。
  さて、今年の台風24号は、風雨のみならず海水を巻き上げ各地に“塩害”をもたらしています。千葉では植物が急に枯れたり、静岡では農作物が枯れる被害が相次いでいます。塩分が植物や農作物に付着すると、葉がしおれ黒く変色するそうです。対策として、洗い流すことが最良の策といわれますが、停電が起ると散水設備が使用できないことが追い打ちをかけます。
  さらに塩害は、東京、千葉の鉄道トラブルによる送電線の停電までもたらしました。送電設備に塩分やちりが付着するとショートを起こし停電の原因になるそうです。これにより東京京成電鉄では2日間で約7万人に影響が出たと報じられています。さて、これらの塩害対策について、海に近い農地では、古くから石灰などによる“除塩“対策がなされているそうで、海から離れた農地でも今後その対策が求められます。送電線の塩害対策には、鉄塔と電線を絶縁し電力の安全供給を担っている碍子(がいし)を洗浄し塩分を除去するか、碍子の表面にシリコンなどを塗布するか、はたまた碍子の連結個数を増やしたりする対策が挙げられるそうです。塩害は秋の紅葉やコスモスの枯死、また全国350箇所でソメイヨシノの開花にまで影響が出ているようです。桜の開花については、ホルモンのバランスの崩れだそうです。
  ここに来て“山津波”や“塩害”の防止策を講じることが切実な問題として浮上してきました。

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


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今回のねらい

  今回は、新生児の末梢血液像の単核細胞の区分に挑戦します。

新生児の分類は判定に悩みますが、成人の判定基準を参考にしてトライしましょう。

症例編は、わずかな臨床像と検査データから次なる検査を模索し、骨髄像から臨床診断を試みて下さい。

問題

骨髄像の細胞同定を行なって下さい。

1-1<設問1>

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×1000

光顕的所見から臨床診断を考えて下さい。

2-1<設問1>

【所見】
【Case】 60~65歳.男性
WBC4,500/μL、RBC412万/μL、Hb12.6g/dL、Ht37.4%、PLT38.2万/μL、NCC46.5万/μL 

  • PB-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-PO×1000

  • BM-PAS×1000/BM-ACP×1000

解答・解説

問題 1

   骨髄像の細胞同定を行なって下さい。

【解説】

BM-MG.1000






正常と思われる骨髄像で鑑別を要する細胞を提示しました。骨髄では細胞分裂能を有する細胞には“移行型” が出現しやすく、それは成熟傾向の要素を確認した上で成熟型へ同定することを推奨します。また、顆粒を有する細胞については、細胞質に二次的変化(低顆粒・豊富な顆粒)が起るため、核の所見を優先にして同定します。

【正答】
A-前骨髄球、B-前骨髄球、C-骨髄球、D-単球、E-骨髄芽球、F-前単球 

【解説】
A.細胞径20μm大、N/C比は低く、核はほぼ円形、クロマチン網工はやや繊細で核小体を認めます。細胞質の好塩基性が強く顆粒を認めます。芽球様ですが、一次顆粒を有することから移行型の前骨髄球に同定しました。
但し、腫瘍性の場合は“顆粒を有する芽球” として捉え、周囲の単一様式を確認します。 

B.細胞径23μm大、N/C比は低く、核はほぼ円形、クロマチン網工はやや粗剛で核小体を認めます。細胞質の好塩基性はみられ、一次顆粒は多すぎますが、二次的変化を有する前骨髄球に同定しました。

C.細胞径16μm大、N/C比は低く、核はほぼ円形、クロマチン網工は粗剛で核小体は認めません。細胞質の好塩基性は薄れ好酸性を呈していることから骨髄球に同定し、顆粒は二次顆粒として認識します。

D.細胞径20μm大、N/C比は低く、核は円形で軽度の不整、クロマチン網工は繊細、細胞質は核周辺部(矢印)と辺縁部に色調の差がみられ、二重構造として捉えられそうです。一般に細胞質は灰青色で、微細なアズール顆粒を有します。私見ですが、細胞質の二重構造は単球の特徴の一つにしています。

E.細胞径15μm大、周囲の赤血球に押された感があるので、実際はもう少し大きくなりそうです。N/C比は高く、核は類円形、クロマチン網工は繊細で核小体がみられそうです。細胞質の好塩基性はみられ顆粒は認めないことから骨髄芽球に同定しました。

F.細胞径22μm大、N/C比は低く、核は円形、クロマチン網工はやや粗剛で数個の明瞭な核小体を認めます。細胞質の好塩基性は強く空胞を有し、アズール顆粒は不均一性です。全体像から前単球になりそうですが、顆粒が多すぎます。顆粒については、一般には微細ですので、本例は二次的変化によって顆粒が目立ったものと認識します。



問題 2

   60~65歳.男性。主訴は倦怠感で軽度の肝腫大があり、リンパ節腫脹は認めません。

【解説】

(PB-MG×1000)

(BM-MG×1000)

(BM-MG×1000)

(BM-PAS×1000 BM-ACP×1000)


【末梢血】

(A)白血球数正常(4,500/μL)の白血球分類で、芽球を5%認めました。
芽球は20μm大で、N/C比は高く、クロマチン網工は繊細で核小体を認めるようです。

【骨髄】
(B)過形成(46.5万/μL)の骨髄像分類では、芽球は99%と増加していました。
末梢血と同様な芽球の形態で、N/C比はやや高く、ほぼ円形でクロマチン網工は繊細で核小体を認めるようです。一部に顆粒を認めますがアウエル小体は不明のようでした。

(C)骨髄のPO染色ですが、塗抹に不備があり、MG染色との細胞分布が一致せず、塗抹の厚い部分にのみ芽球細胞が散見していました。その箇所の判定ではPO陽性芽球は20%でした。

【確定検査】
免疫形質:CD13,CD33,CD34,HLA-DR陽性
染色体・遺伝子:正常核型・異常なし

【臨床診断】
骨髄の芽球は90%以上(実際は99%)であり、それらはPO染色に3%以上(実際は20%)であったこと、また顆粒球系マーカーの発現を認めたことから急性骨髄性白血病(M1)と診断されました。
本例は、塗抹に不備がありましたが、骨髄穿刺の際、 dry tapで採取不能の場合は、針先の部分に付着した内容物をスライドガラスに塗布し有効活用することが重要です。



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