HOME > 血液検査コーナー > 検査技師のためのマンスリー形態マガジン > 症例3 解説と解答

検査技師のためのマンスリー形態マガジン

症例3 解説と解答

年齢・性別 5-10歳 女児
血液学所見 WBC(/μl) 129,000
(Blast56%,Mo38%)
RBC(万/μl) 386
Hb(g/dl) 11.2 Ht(%) 32.6
PLT(万/μl) 7.6 MCV(fl) 84.4
MCH(pg) 29.0 MCHC(%) 34.3
骨髄所見 NCC(万/μl) 40.4
(Blast50.5%)
MgK (μl) 0
生化学所見 LD 364 IU/l

 
 
[PB-MG.×400]
拡大して見る
[BM-MG.×1000 ]
拡大して見る
 
 
[BM-MG.×1000]
拡大して見る
[BM-PO.×1000 ]
拡大して見る
 
 
[BM-EST二重.×400]
拡大して見る
 
 

 

1.末梢血の所見を述べて下さい。

白血球の増加 (129,000/μl)、貧血、血小板減少を認めます。  
芽球は56%みられました。末梢血に芽球が20%以上認めることより急性白血病を疑うことになります。
しかも単球の増加(49,020/μl)も顕著のようで単球が絡む急性型白血病を考えます。

2.骨髄の所見を述べて下さい。

過形成(40.4万/μl)像で芽球を含め分化傾向がみられます。
芽球は50.5%みられ、分化傾向として顆粒球系と単球系の混在がみられるようです。
実際には顆粒球系が24.5%、単球系が21.5%みられました。
PO染色では芽球は陽性で、分化傾向には陽性と陰性とに分かれました。
EST二重染色ではクロロアセテートに陽性(青色)が一部みられ、ブチレートには陰性でした。

3.予想される診断に何か障害はありますか。

末梢血、骨髄ともに芽球が20%以上と単球の増加より、急性骨髄単球性白血病(AML-M4)を疑いますが、肝腎なブチレートEST染色が陰性が気になります。

4.追加検査は何かありますか。

単球系の混在を考えると血清や尿リゾチーム検査が必要と思われます。  
非特異的EST染色の別法であるアセテートEST染色を実施します。

5.形態診断を述べて下さい(条件つきの場合はコメントを)。

末梢血・骨髄にて芽球が20%以上、末梢血で単球が5,000/μl以上(実際は49,020/μl)、骨髄では顆粒球系と単球系が20%以上(実際は顆粒球系24.5%、単球系21.5%)みられたことよりAML-M4を疑います。顆粒球系と単球系の混在についてはPO染色にて陽性(顆粒球系)と陰性・弱陽性(単球系)が分かれることで診断は可能ですが、単球系に陽性であるべきブチレートEST染色が陰性であることが唯一合致しません。
しかし、EST染色所見以外はAML-M4を診断づけるものであることより、EST染色の陰性は例外所見として捉えることになります。EST染色が本例のような所見を呈することは文献的に10〜20%位はあるようです。
アセテートEST染色も実施して比較するのも一方かも知れません。

6.鑑別診断があれば述べて下さい。

末梢血、骨髄における芽球が20%以上占め、PO染色に陽性より急性骨髄性白血病(AML)のなかでも広義の意味から分化傾向を示す病型が鑑別の対照になります。
従って、M2、病的好酸球を有するM4(M4Eo)、M5bなどが範疇になりそうです。本例は単球系の混在がありますので、@M4EoとAM5bに絞られます。
@は骨髄で粗大な顆粒を有する病的な好酸球を認めますが本例では認めないことで除外され、Aは骨髄で単球系(単芽球、前単球)が80%以上認めますが本例では認めないことで除外されます。

 


形態マガジンTOPへ戻る
「Q3 解答と解説」 を見る→



 

ページトップ