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Talk CBC Vol.13 血球計数における白血球分類(2)Talk CBC Vol.13 血球計数における白血球分類(2)

CBCを語ろう Talk CBC 血球計数における自動白血球分類(2)

  • 自動白血球分類法(VCSテクノロジー)における技術的な背景

今回は、前号で紹介した自動白血球分類法であるVCSテクノロジーがどのようにして確立されたかについて、技術的な背景とその利点について解説します。
VCSテクノロジーは、等張性の測定試薬によって細胞を生体内に近いニアネイティブな状態(生体内と等しい性状)に保ちながら、フローサイトメトリー法によってフローセルに送り込み、1検体あたり8,192個の細胞について、細胞体積、細胞内密度、レーザー散乱光の3種類の測定シグナルを同時検出して5種類の細胞に分類します。この白血球分類法を可能にした測定技術としては以下が挙げられます。

1) 新しい測定試薬の開発
2) フローサイトメトリーの搭載
3) 高速処理演算装置の搭載

1)自動白血球分類においては、目視法で用いられる細胞化学染色を用いた測定法が一般的とされていましたが、VCSテクノロジーでは白血球細胞を生体内の性状に近い状態に保持し、無染色で測定を行います。測定試薬は2種類であり、エリスロライズ(溶血剤)は赤血球を溶血し、スタビライズ(細胞安定化剤)では細胞の性状を生体内の状態に保持します(図1)。白血球細胞は、測定試薬(溶血剤)の影響を受けることなく、細胞の体積、細胞表面の特性や細胞内構造などの特徴を保ちながら細胞分類を行うことが可能となりました図2)。
一方、血球計数では溶血剤を用いて赤血球を溶血し、白血球数測定を行っていますが、白血球は溶血剤の影響により裸核化されており、細胞の性状は大きく変化しています。
また、この新しい測定法では細胞化学染色を行わないことにより分析装置のチューブ交換や洗浄操作などの必要はなく、メンテナンス作業は大幅に軽減されています。

2)自動白血球分類を行う上で必要な測定技術としてフローサイトメトリーがあります。フローサイトメトリーとは、細胞浮遊液を高流速のシース液(鞘流)に流し、それぞれの細胞に対して照射されるレーザー光の測定情報を取得する細胞測定法を示します(図3)。主な測定情報は、以下の通りです。

  • 前方散乱光(Forward Scatter;FS)= 細胞の大きさ
  • 側方散乱光(Side Scatter;SS)= 細胞内部の複雑さ
  • 蛍光(Fluorescence;FL)

フローサイトメトリーの利点は、短時間(数秒〜数分)に多量(数千個〜数百万個)の細胞を1個ずつ定量測定することが可能な統計的精度の高い細胞測定法で、それぞれの細胞の大きさや形状、内部構造の違いなどの細胞性状を同時測定し、細胞同定や細胞群の存在比を短時間で解析することができます。また、フローサイトメーターは、取得細胞数や細胞計測時間などの測定条件の変更が可能で、細胞数の少ない検体でも精度の高い測定が可能です。この機能は、UniCel DxH 800にも搭載されており、WBC数、PLT数の低値検体でも精度保証された測定を可能にしています。
ベックマン・コールターでは、1960年代からフローサイトメーターの開発を行っており、1969年実用化に成功しました。また、1970年代には細胞分取が可能なセルソーターが製品化されました。しかしながら、臨床検査室におけるフローサイトメーターの普及は、機器が高額であり、大型のためにしばらくの時間が必要でした。1984年クリニカルフローサイトメーター Coulter model EPICS-C(図4)、1986年コンパクトなベンチトップタイプの Coulter model Profile U(図5)が発売され、臨床検査室に普及していくことになります。

3) 自動白血球分類では、従来の血球計数と異なり、大容量のデータ処理を行わなければなりません。また、測定時間の制限もあり、短時間での処理が必須となります。

コンピュータの世界に目を向けますと、1970年代アップルコンピューターが発売した8bitのワンボードマイコンのApple IIの成功により、パーソナルコンピュータが普及していきました。1980年になるとIBMが市場参入し、16bitのIBM PCが発売され、産業分野や一般家庭にも広く普及していくことになります。IBM PCは、現代のパソコンの原型といえるもので、グラフィックスや記憶装置などの拡張性に優れていました。1988年に発売された白血球分類機能を搭載したCoulter model STKS(図6)には、IBM PCが搭載され、100検体/時間の高速処理と1,000検体の検体保存を実現しました。また、強化されたグラフィックス機能により、高解像度のスキャッタープロット図(細胞分布図)表示や測定結果のカラー印刷(図7)が可能となりました。スキャッタープロット図(細胞分布図)は、細胞の分布状態や異常細胞の出現領域(図8)を確認することが容易で、検体の異常判定や病型の分類など大変有用な測定情報となりました。従来は塗抹染色標本でしか確認できなかった細胞の分布状態などを短時間が確認することが可能となり、自動白血球分類は、臨床現場で大きな広がりを見せることになります。

次回も引き続き、血球計数における自動白血球分類について解説します。

引用文献・資料

  • 1)岸 孝彦他:コールターVCS - その評価と日常検査への応用.From Coulter No.12 1989
  • 2)米満 博他:自動血球計数/白血球分類装置コールターSTKSの情報解析と臨床への応用.From Coulter No.17 1992
  • 3)東 克巳:フローサイトメーターの原理と応用.Medical Technology Vol.33 No.1:12-17 2005


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