HOME > 学会・展示会・セミナー案内 > 平成25年度日臨技九州支部医学検査学会(第48回) 報告

平成25年度
日臨技九州支部医学検査学会(第48回) 報告

会場の様子

悪性腫瘍の診断補助マーカーとして世界中で使用されている癌胎児性抗原(Carcinoembryonic Antigen: CEA)。
その開発者である黒木政秀先生(福岡大学医学部)にご講演いただきました。
さまざまな癌の診断に使用されているCEAについて開発者ならではお話しを腫瘍マーカーの定義と検出方法や癌の診断・治療方法の基礎から分かりやすくご説明いただきました。

新しい腫瘍マーカーの開発についてもお話ししてくださり、陽性率の高さもさることながら、患者さんへのメリットや診療報酬点数などのコストについても必要な要件であるとお話されていました。
がん抑制遺伝子p53についても分かりやすくご説明いただき、とても意義深いセミナーとなりました。

演者 黒木政秀先生会場の様子座長 渡辺正一

展示ブースでは、血球計数装置ユニセルDxH800を展示しました。測定方法やメンテナンス方法、当日展示していなかった血液塗抹標本作製装置ユニセルDxH SMSとの運用方法についてご紹介させていただきました。
多くの方に足を止めていただき、見学していただくことができました。ありがとうございました。

  • 日         時
  • 2013年10月5日(土)、6日(日)
  • 会         場
  • 福岡国際会議場 5階  MAP
    ベックマン・コールターブース小間番号62番
  • 展 示 機 器
  • - 血球計数装置 ユニセル DxH800
  • 日         時
    • 2013年
    • 10月
    • 6日(日)
    • 12:00 〜 13:00

  • 会         場
  • 福岡国際会議場 3階 メインホール(第1会場)  MAP
  • 演         題
  • 「最も使われている腫瘍マーカーCEAの検査法と臨床的意義の再点検」
  • 演         者
  • 黒木 政秀 先生
    福岡大学医学部生化学教室
  • 座         長
  • 渡邊 正一
    ベックマン・コールター株式会社 ダイアグノスティックス学術統括部門
  • 内         容
  • はじめに
    癌胎児性抗原(Carcinoembryonic Antigen: CEA)は、もともと大腸癌で発見された糖タンパク質であるが、その後いろいろな癌でも見つかり、それらの癌の確定診断における補助指標として、また治療後の経過観察における指標として、今や世界で最も利用されている腫瘍マーカーである.一方で、新しい癌関連物質が発見され新規の腫瘍マーカーとして審査される際、既存のマーカーに比べて優る点を有することが認められる条件の一つとなるが、CEAはその対照として王者の地位を譲らず、新規マーカーの認可を厳しくする立場にもたっている。それでは、CEAに問題点はないのであろうか。ここでは、CEAが日常汎用されているまさに今、その検査法と臨床的意義を改めて点検し、かつその有用性を整理する。

    1.CEA自体の特徴と問題点
    CEAには2つの大きな特徴が存在する。一つは、正常人のいろいろな臓器の粘膜上皮や導管上皮でも発現していることである。しかし、CEAの特殊な細胞上の分布パターン(極性)により、通常は血中には流出せず、その濃度は基準値以下に保たれる。一方、癌組織では、組織構築と細胞極性が乱れ、血中にも流出するようになる。正常組織でも発現しながら、CEAが癌患者において腫瘍マーカーになりうる理由である。ただ、正常人にも存在するという事実は、後述するように、軽度のCEA上昇を示すがその他の検査で悪性所見がない場合、重要な意味をもってくる。
    CEAのもう一つの特徴は、構造の一部がCEAに類似するためCEA 遺伝子ファミリーと呼ばれる一連の糖タンパク質群が存在し、これらが上記の粘膜上皮や導管上皮に加えて白血球でも発現していることである。当然のことながら、これらは炎症性疾患で増量し、測定キットによっては偽陽性の一因になる。

    2.CEA測定上の重要点
    現在,CEAは固相一次抗体と標識二次抗体を利用したサンドイッチ法に基づく化学発光免疫測定法(CLIA)や化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)あるいは酵素免疫測定法(EIA)などで実施される.最も重要な点は、CEA 遺伝子ファミリーと反応しない抗体を使うことであるが、その点を明確にした測定系はそう多くはない。われわれは、CEA 遺伝子ファミリーが明らかになった時代に、これらのファミリー分子を遺伝子工学で作製し、これらと反応しない抗体を選択することで、CEAに特異的な測定系を開発した。

    3.CEA の臨床的意義の再評価
    CEA値が上昇する主な癌は、大腸癌、胃癌、胆嚢・胆管癌、膵癌、肺癌、卵巣癌、乳癌、甲状腺髄様癌などで、おおむね腫瘍の大きさを反映して,その経時的な測定に意義がある.しかし,他の腫瘍マーカーと同じように早期癌での陽性率は低く,癌の診断に単独で利用するには無理がある.現時点での大きな意義は次の3点である。a.上昇している場合は悪性所見の1つになる。b.外科療法後の経過観察に有用で、根治手術の成否の判断や再発・転移の発見に有用である。c.化学療法や放射線療法など非観血的治療法の効果判定に有用である。ただ、治療と同時に癌組織がなくなり直ちにCEA下降が始まる外科療法と違い、その他の治療法では、治療開始後しばらくは破壊された癌組織からのCEA流出がつづくので、一時的にCEAが上昇したあと下降に向かうのが普通である。
    一方で、組織構築や細胞極性に影響を及ぼすような要因が加わると,癌患者に限らず血中のCEAが多少上昇することがある.また,CEAの代謝経路や排泄経路である肝・胆道系や腎・泌尿器系の障害でも上昇することがある.潰瘍性大腸炎、クローン病、喫煙習慣、強度の便秘、肝硬変、胆石症、腎不全などがそうである。しかし、これらの疾患では、基準値の2倍以上の値を示すことはなく、多くの場合、軽微な上昇と下降を繰り返すことが多く、治療を行わない限り上昇しつづける癌の場合と違う点である。

    4.CEAの癌治療への応用の可能性
    癌細胞膜上のCEAを標的にし、癌の治療をめざす試みも続けられている。CEAに対する抗体を使うものであるが、単独でというより、現在開発が進んでいる遺伝子治療法や超音波療法あるいは光線療法を補完し、これらの治療法を癌にだけ向け正常組織への影響を減らして副作用をなくそうとするもので、大きな注目と期待が寄せられている。


ページトップ