HOME > 血液検査コーナー > 検査技師のためのマンスリー形態マガジン > 症例11 解説と解答

検査技師のためのマンスリー形態マガジン

症例11 大球性正色素性貧血(MCV:126fl)の骨髄像です。
染色体異常は認めませんでした。次の問いに答えて下さい。
 解説と解答

拡大して見る
 
拡大して見る
 

Q1.骨髄像の形態所見からあてはまるものを選んで下さい。

  1. 正常な赤芽球がみられる。
  2. 赤芽球系に巨赤芽球様変化がみられる。
  3. 正常な顆粒球がみられる。
  4. 顆粒球系に巨大化がみられる。
  5. 顆粒球系に顆粒異常がみられる。
 

Q2.今起こっている原因についてあてはまるものを選んで下さい。

  1. 赤芽球、顆粒球の成熟過程に変化はない。
  2. 赤芽球系にHb合成障害をうかがう。
  3. 顆粒球系に成熟停止をうかがう。
  4. 赤芽球、顆粒球に核のDNA合成障害をうかがう
 

Q3.診断に必要な検査はありますか。

  1. 血清鉄
  2. VB12または葉酸
  3. ハプトグロブリン
 

Q4.考えられる疾患はどれですか。

  1. 正常
  2. 鉄欠乏性貧血
  3. 巨赤芽球性貧血
  4. 溶血性貧血



【ねらいと解説】

大球性正色素性貧血(MCV:126fl)であり、染色体異常がないとの所見がありました。
大球性貧血は通常MCVが100flを超えるものとされますが、本例のように120flを超すことは稀なことで、その多くは巨赤芽球性貧血多く、骨髄異形成症候群(MDS)にもみられることがあるようです。

【末梢血液像の所見】

大球性正色素性貧血(MCV:126fl)の血液像は、赤血球の形態異常として大型赤血球(macrocyte)やそれに伴う大小不同が、白血球の形態異常として好中球の過分葉(hypersegmentation)がみられました。

【骨髄像の所見】

過形成像の骨髄は、赤芽球がやや優位で、成熟段階がみられますが、巨赤芽球様変化がうかがえます。この変化を掴むには、成熟型の方が形態的にわかりやすく、核DNA合成障害によって起こる核と細胞質成熟乖離(細胞質は正常の成熟過程を示すが核の成熟が遅れる)の現象です。その現象は顆粒球系にもみられ、特に成熟型の後骨髄球や桿状核球に巨大化が、分葉核球には過分葉がみられます。
この現象やこれらの所見は、上記のMDSにもみられますので、それを否定する意味から大球性貧血の原因の1つとしてビタミンB12や葉酸を生化学的に検索し、どちらかの低値が判明すればMDSは否定され、巨赤芽球性貧血を最も診断することになります。また、MDSに比べると、本症のMCVは120flを超すことが多く、巨赤芽球は核の発育不全のためかどうか不明ですが、細胞質がやや豊富な形態をとることが多いようです。用語的には、ビタミンB12か葉酸の原因が判明すれば、巨赤芽球性変化とよんだ方が正しいかも知れません。

【解答】

Q1. 2, 4
Q2. 4
Q3. 2
Q4. 3

【正解率】

Q1. 20%
Q2. 80%
Q3. 100%
Q4. 100%

 


形態マガジンTOPへ戻る
「Q11 解答と解説」 を見る→



 

ページトップ