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症例54

年齢 60歳代
既往歴 40歳代に胃癌.
現病歴 舌より出血し来院、DICの診断後、CTにて骨盤内(前立腺〜直腸間)にmassを認め、骨髄検査が試行された.表在リンパ節腫脹、紫斑、点状出血なし.
血液学所見 WBC(/μl) 7,070 RBC(万/μl) 352
Hb(g/dl) 9.2 Ht(%) 32.0
PLT(万/μl) 11.2 MCV(fl) 90.9
MCH(pg) 26.1 MCHC(%) 28.7
血液像(%) St-Seg 64, Ly 26, Mo 8, Eo 2
Fibrinogen 111 mg/dl,FDP 147.53 μg/ml
骨髄所見 NCC(万/μl)  15.9 BM-MgK  6.25
abnormal cell (+) 
生化学所見 LDH 183 IU/l, 血清Ca 10.1 mg/dl, CRP 0.07 mg/dl

 
[骨髄×400.PAS染色
集塊細胞のレース状の細胞質はPAS染色にび慢性の強陽性を呈する.
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[骨髄×400.PO染色
集塊細胞は結合性で重積がうかがえる.
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[骨髄×1000.PO染色
集塊細胞の核は偏在性で、クロマチンは粗網状で細胞質は隙間の好塩基性がみられる.
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[骨髄×400.PO染色
別の視野から細胞の集塊には結合性がうかがえる.
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[骨髄×1000.PO染色
集塊細胞の核は円形から類円形で、細胞質はレース状で、PO染色に陰性である.
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解説&臨床診断



 正解 : 4 転移性腺癌

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年齢 60歳代
〜前発信〜
末梢血所見から 貧血、血小板減少に伴うDIC所見で赤血球形態異常を若干認めるほかに著変はない.
骨髄所見から 低倍率で鏡検中、細胞の集塊を認め、それらは結合性や重積性がうかがえる.
集塊状の細胞の核は偏在性で、クロマチンは粗網状で好塩基性の細胞質はレース状にみえる. また肥厚した白い部分は粘液産生をうかがわせるものであった.
細胞化学所見から 集塊状の細胞はPAS染色にび慢性の強陽性を呈する.
PO染色EST染色は陰性である.
【形態診断】 集塊状の細胞の結合性や重積性は正常細胞の集合とは明らかに異なる形態像であり、骨髄転移像を考える. PAS染色でび慢性の強陽性を呈したことは粘液産生を証明するものであり、腺癌の骨髄転移を考えた.
〜後発信〜
【臨床診断】 舌出血のDIC所見より入院後、骨盤内(前立腺〜直腸間)にmassを認め、骨髄穿刺にて腺癌細胞の骨髄浸潤を認め、腺癌の骨転移と診断された.
しかし、明らかな原発巣は認めず、原発不明癌の診断となる.
治療はMTX/5FU、weekly Taxolによる化学療法は開始された. 以後3回の入退院を繰り返し、11ヶ月後初診のDICが進行してきたため、また全身倦怠感も増悪し、経口摂取困難となり入院となる. 化学療法の適応もなく対症療法にて経過観察になる. 癌性疼痛の増強、血小板の減少(2.3万〜0.8万/μl)、口唇・舌に点状出血を認めるようになり意識レベルの低下を認め、頭蓋内出血のため死亡される.
腫瘍分類 骨髄転移性腫瘍
☆転移性腺癌 Metastatic adenocarcinoma (原発不明)


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