2013年10月21日掲載

関西医科大学附属枚方病院など

Vol.20ISO15189取得の動き、再加熱

「Future Lab Session in OSAKA」オープンセミナー開催

Vol.20:関西医科大学附属枚方病院など ISO15189取得の動き、再加熱 「Future Lab Session in OSAKA」オープンセミナー開催

  厚生労働省は7月、治験などを実施する医療機関はISO 15189などの外部評価認定により検査精度の信頼性を確保することを基本とする考え方を示した。これを受けて、大学病院をはじめ医療機関ではISO 15189取得への関心が高まっている。こうした中、認定取得・維持を会員間で支援する「FutureLab Session in OSAKA」のオープンセミナーが9月14日に大阪市内で開催され、多くの検査関係者らが参加し、専門企業からのコンサルティングを受けずに認定を取得した関西医科大学附属枚方病院の取り組みなどに耳を傾けた。

  「Future Lab Session in OSAKA(FLS大阪)」は、大阪近郊でISO 15189の認定をすでに取得した施設とこれから取得を目指す施設が参加している。活動の中核は「医療機関(会員)間の相互サポート」で、会員メンバーはISO 15189の自力認定取得を目指す会員施設の取り組みをサポートする。また、認定を取得した会員施設はその経験を生かして次に認定取得を目指す施設をサポートしながら、相互の情報交換により認定を維持し、それぞれのQMS(品質マネジメントシステム)を向上していくことを目的としている。
  多くの施設が自施設の検査や精度管理に自信を持ちながらも、認定取得には二の足を踏んできた。検査部門に意欲があっても、コストの観点から病院経営者の理解が得にくいためだ。しかし、施設間の相互サポートにより、取得費用は抑えられる。認定取得が治験を呼び込み、病院に収益をもたらす可能性もある。
  政府は国策として国際共同治験や医師主導型治験、臨床研究を推し進めている。厚労省医薬食品局審査管理課は7月1日付の都道府県への事務連絡で、治験などを積極的に実施する医療機関が臨床検査の精度管理を担保するよう、これらの医療機関がISO 15189などの外部評価を受け、認定を取得すべきとの考え方を示した。

関西医大枚方病院、認定施設間の相互サポートにより認定

大倉ひろ枝氏
大倉ひろ枝氏
  FLS大阪は今回、会員でなくても参加可能なオープンセミナーを開催した。認定取得に向けた機運が高まる中、大阪のみならず関西圏の中核病院から多くの検査関係者が会場に足を運んだ。
  「FLS in OSAKAを活用した認定取得への挑戦」をテーマに記念講演を行った関西医科大学附属枚方病院臨床検査部の大倉ひろ枝技師長は、FLS大阪の世話人会による指導や支援によって、専門企業によるコンサルティングを使うことなくISO 15189の認定を取得した経験を話した。
  同検査部では毎年、高齢スタッフの退職に伴うスタッフの入れ替わりがあり、人材育成や品質保証維持のためにも認定取得が急務となっていたという。手始めに2012年8月に標準作業手順書(SOP)を作成するための委員会を設置。その一方で認定取得コストの見積もりを行ったところ、日本適合性認定協会(JAB)の認定審査費用が約250万円必要な上、専門のコンサルティング料金がさらに相当額かかることが分かった。そこで発足が予定されていたFLS大阪への参加を決め、13年8月の認定取得に向けて準備を進めた。
  JABによる6月の本審査では「不適合」8件、「注記」16件の計24件について是正が求められたという。是正処置回答書を7月12日に提出し、認定は8月15日に決定した。大倉氏は短期間での是正処置・報告は大変だったとしながらも、「指摘が多いほど、より良いものへと近づくように感じた」と振り返った。
  認定取得までにFLS大阪の主催セミナーに参加するとともに、認定取得済みの会員施設を見学したり、是正書類報告を含む提出書類に関する指導を受けたりした。大倉氏は「全ての質問に的確な回答をいただいて安心できた」という。その上で、FLS大阪への参加メリットについて「コンサルティング費用が不要」「内部監査員養成受講料が安価」「他施設の資料を参考にできる」「いつでも問い合わせができる」―などを挙げた。

外部評価認定の有無、病院の差別化に

山本晴子氏
山本晴子氏
  オープンセミナーでは、国立循環器病研究センター先進医療・治験推進部の山本晴子部長が、「治験・臨床研究に求められるISO 15189」をテーマに基調講演を行い、多国間での多施設共同治験が一般化した新薬開発では、個々の施設の検査精度を向上させるだけでなく、施設間差を小さくすることが重要だと話した。
  山本氏は、日本国内だけを見ると標準化が進んでおり、施設間差は少ないと指摘した一方で、治験がグローバル化したことにより、新薬開発に必要な治験や対象患者の数が増えたことなどを説明。治験参加国が同じ精度水準で検査を実施できないと統計的有意差が出にくくなるため、新薬メーカーにとって施設間差を抑えることが大きな課題になっていると指摘した。
  また、グローバル治験では北米、南米、ヨーロッパ、アジアなどといった地域ごとに臨床検査の中央測定が行われている事情も説明した。アジアの中でも日本はISO 15189認定施設数が少ないがインド等では増加していること、グローバル試験の中央測定がアジア地域ではシンガポールなどで行われることが多いことなどを指摘した。
  座長を務めた関西医科大学臨床検査医学講座の高橋伯夫教授は、自身の経験からもアジア地域での取り組みの早さに危機感を感じており、こういったセミナーなどでの情報交換を通じてより多くの施設が認定されることを望んでいると述べた。
  9月13日現在、日本国内のISO 15189認定取得施設は69施設。病院では31施設が取得している。大学病院はこのうち18施設を占める。取得病院は西日本に多く、西高東低の傾向がはっきりしている。
  山本氏はISO 15189などの外部評価認定の有無が、治験・臨床試験の受託に与える影響についても言及した。大学病院や国立高度専門医療研究センターなどの研究型病院のうち、治験や臨床試験を主催する臨床研究中核病院では今後は認定取得が必須となり、そのほかの病院では認定取得の有無により主催できるかどうかが決まるようになるのではないかと見通しを示した。一方、ISO 15189などにより検査精度の信頼性確保ができていない地域基幹病院や市中病院では、臨床検査を外注しない限り治験への参加は困難になる可能性があるとの見方を示した。

パネルディスカッションでの意見交換も

  日本適合性認定協会試験所審査員の朝山均氏の司会で、JAB認定審査員によるパネルディスカッションも行われた。システム審査員の清水義秋氏(ベックマン・コールター社顧問)は、「最新版の管理方法が品質文書管理規定に定められているか」「サンプリングしたSOPの版数と文書管理リストの版数が一致しているか」などといった具体的なシステム審査のポイントを説明した。生化学・免疫の技術審査について説明した技術審査員の永峰康孝氏(徳島大学病院キャリア形成支援センター)は「妥当性が検証できているか」「外部精度管理調査での不適合項目に対し、適切に対処しているか」などのポイントを紹介。同じく技術審査員の村瀬光春氏(元愛媛大学医学部附属病院診療支援部長)からは現地実技試験や面談での検査担当者に対する力量評価などについて説明がされ、パネリスト間とセミナー参加者での意見交換も行われた。

(The Medical & Test Journal 2013年10月21日 第1250号掲載)

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