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Vol.34:パナソニック健康保険組合松下記念病院 「表面プロット」活用し臨床支援さらに

 パナソニック健康保険組合 松下記念病院(323床、大阪府守口市)の臨床検査科は、機器更新に伴う新規導入で、血球計数装置「UniCel DxH 800」単体と、「UniCel DxH 800」に血液塗抹標本作製装置「UniCel DxH SMS」を組み合わせた「UniCel DxH 801」を導入した。同検査科では、スキャッタープロットの新たな機能の一つとして搭載されている表面プロットの活用など、データ提供を臨床支援につなげている。

 同院が導入した「DxH シリーズ」は、スキャッタープロット表示機能として、2D (2次元)プロットなどでは見逃しやすい少数細胞集団を一目で検出可能な表面プロット機能を搭載している。血液検査部門を担当する臨床検査技師の西原佑昇氏は、「2Dや3Dのプロット表示に比べ、表面プロットはまったく新しい見方ができます。細胞集団の密度が視覚的に表現されるため、異常細胞集団の判別が可能です」と話す。
 従来のベックマン・コールター製血球計数装置に搭載されたプロット表示機能には、細胞集団の分布を色分けで表し、色の濃さで細胞密度を表現する2Dプロットと、細胞の体積や顆粒特性、細胞内の核情報を反映し立体的に同時表示できる3Dプロットがあったが、ベックマン・コールターではさらに細胞特性を生かすために、「DxH シリーズ」に表面プロット機能を搭載し2Dプロットの細胞分布表示に加え、細胞密度を立体方向(Z軸)に表示することを可能とした(図)。異常細胞集団の検出だけでなく、細胞分布の重なりを把握することができるのが特徴だ。

Case 異常リンパ球 Burkitt Lymphoma

表面プロットは鏡検の有益な補助情報

 異常細胞集団の有無が容易に鑑別できるため、血液検査部門では、目視鏡検での有益な補助情報とするべく、これをルーチン情報に採り入れた。このデータを事前に得られることで目視鏡検でも注意深い観察ができるようになるという。西原氏は、異常細胞検知の手段として、一般的なフラグに代わりうる方法との見方も示している。
 西原氏らは導入当初から同機能に着目。臨床上の有用性を検討し、2015年秋に開催された日臨技近畿支部医学検査学会でこれまでの研究データを報告した。
 この報告では、表面プロットの活用方法についても紹介した。赤血球の形態異常がある場合の赤血球破片のデブリなどの集積は、形態異常に起因する溶血不足により生じるとの見方を提示。表面プロット機能を活用し「(結果の異常に) 気付くことの大切さ」を強調している。その上で「同様の機能はほか(の装置) にもあるが、意識して検討しないと分かりづらい。表面プロット機能は画像を参照することで、すぐに正常との違いに気付くという点でも有効」と結論付けた。

診療科での活用も視野

臨床検査科(血液検査担当)の皆さん
(右端は西原氏、左から2人目は塩崎氏) 同機能は、血液内科に対する情報提供の可能性も 検討されている。
 現在、血液検査部門では、週1回開かれる血液内科のカンファランスに、看護部や薬剤部とともに参加。新規入院患者の背景や今後の治療方針などの情報交換を行っている。担当検査技師の塩崎尚子氏は、「鏡検結果に基づく異常細胞について、カルテに記載して いるコメントに加え、さらに詳細な説明を技師の立場で説明しています」と話す。
 また、カンファランス以外でも血液内科の医師とのコミュニケーションの密度は高く、さまざまなデータについて技師と議論を交わすことも多い。その際に、表面プロットデータを示すこともある。西原氏は、「血液内科の医師も、こういう(より可視化が進んだデータが得られる)時代に入ってきたという認識は持っていると思います。今後症例を集め、さらにエビデンスを構築していくことが重要だと考えています」と指摘する。
 表面プロットは正式な情報提供との位置付けではないが、「(診断前情報として知らせることで)判定する上での精度向上につながる。正式報告の前段階との扱いだが、医師に対する検査側からの情報提供としてのインパクトは大きいと考えています」。西原氏の期待は 大きく、「今後データの蓄積をしっかり進めていきたい」と意気込む。
 村瀬幸生技師長は、「血液内科の医師が一緒にデータをみることも多く、将来的には治療方針の決定などにつながっていけばいいとの医師側の期待もあります」と臨床側のニーズを代弁する。

目視鏡検の頻度減少に貢献

検体搬送に活躍するホスピー DxH シリーズ導入後、DxH 800 は夜勤帯を中心に、DxH 801は日勤帯でそれぞれ運用している。血液学的検査の1 日当たりの検体数は平均300件で、多い時では約400件になる。また検査部門全体では、病棟検体を搬送ロボット「HOSPi」(ホスピー)で回収(下写真)。人員の効率的な運用につなげている。
 検査品質面でのメリットも大きい。網赤血球測定精度の検討結果では、高値あるいは低値でも目視鏡検結果との高い相関が得られており、「DxH シリーズでは目視鏡検による再確認を行わずに済むケースが増え、結果報告での効率性が上がった」と、西原氏と塩崎氏は口をそろえる。
 血液塗抹標本作製装置は以前から導入されていたが、「DxH SMS」を新規導入した効果も指摘する。「DxH SMS では機能向上があり、作製された標本の視認性も高くなりました」(西原氏)。装置操作の簡略化で夜勤者の業務に組み込むことができ、朝の時間帯の業務効率が向上したという。

表面マーカー検査(白血病・リンパ腫解析)の院内化も

村瀬技師長 血液検査部門では、CD34、末梢血T/B細胞を実施しているが、細胞性免疫検査(白血病・リンパ腫解析)院内検査導入を検討中。院内へ移行させることで「白血病疑いの患者が来院したら、その日のうちに形態学的診断と表面マーカーの結果の情報で迅速な確定診断につなげたい」と村瀬技師長。検査部門全体では患者への検査説明など臨床での業務支援の充実も検討課題に挙げる。
 DxH シリーズを効果的に活用し検査部門の業務効率を上げたことで、臨床検査技師の活動の幅がさらに広がろうとしている。

(THE MEDICAL & TEST JOURNAL 2016 年9月1日第1360 号掲載)

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