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Vol.36:第18回日本骨粗鬆症学会・ランチョンセミナー 骨代謝マーカー、アドヒアランス向上に有用

座長の小川氏 第18回日本骨粗鬆症学会ランチョンセミナー「骨代謝関連検査の実践的活用〜骨代謝マーカーおよびビタミンD〜」(共催:ベックマン・コールター)は10月7日に仙台市内で開かれ、北陸大学薬学部長で生命薬学講座教授の三浦雅一氏が、骨代謝マーカー測定の有用性などについて解説した。三浦氏は、骨代謝マーカー測定が骨粗鬆症患者の服薬アドヒアランスの向上につながることなどを指摘し、「ぜひ診療で活用してほしい」
と促した。
セミナーの座長は、東京大学大学院医学系研究科加齢医学准教授の小川純人氏が務めた。


座長の小川氏 三浦氏の説明によると日本骨粗鬆症学会は「骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイドライン2012年度版」の内容を取り入れるなどして、2015年度に「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」を改訂。改訂版では、原発性骨粗鬆症の診断手順の一つに「血液・尿検査(骨代謝マーカーの測定を含む)」を明記し、診断に用いる検査の一つとして骨代謝マーカーを位置付けた。
骨代謝マーカーは大きく、骨形成マーカー、骨吸収マーカー、骨マトリックス関連マーカーに分かれ、形成マーカーには「骨型アルカリホス ファターゼ(BAP)」「T型プロコラーゲン-N- プロペプチド(P1NP)」などがある(図1)。
三浦氏はこのうちP1NPについて、三量体の分子と単量体の分子が存在し、検査試薬の「IntactP1NP」は三量体、「total P1NP」は両方に特異性が高いという違いがあると説明。三量体の分子は37℃ ・72 時間の半減期で単量体に分解されることから、「Intact P1NP」は測定結果を過小評価する恐れがあることに注意を促した。P1NP 単量体は腎排泄されるため、両者を測るtotal P1NPは腎機能の影響を受けるかもしれないと指摘した。
一方、BAP は腎機能の影響を受けず、全自動化学発光酵素免疫測定装 置「Access2イムノアッセイシステム」用の検査試薬「アクセスオスターゼ」(ベックマン・コールター)などでは約30分で測定できるとした。
三浦氏が使用試薬数から推定したところ、骨代謝マーカーの検査件数 は年間320万件(2014年度)に上る。骨吸収マーカーは骨形成マーカーの2倍以上の検査件数があり、骨吸収マーカーではTRACP-5b(酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ-5b)が27%、骨形成マーカーではBAPが16%と、それぞれ最も高い割合を占め、検査件数も年々増加している。

図1 骨代謝関連検査とは

服薬中止1年で45%のデータも

 その上で三浦氏は、骨代謝マーカーの役割として、病態評価、治療薬選択の診断補助などを指摘。
さらに、服薬アドヒアランスを向上させる効果があることも強調した(図2)。

図2 骨代謝マーカーの役割

 骨粗鬆症は治療が長期にわたり、患者が自己判断で投薬を中止してしまう率が高い疾患とされる。三浦氏は、医師は患者の7〜8割が治療薬を服用していると考えているのに実際には3割程度だったとする米国の報告を引用。治療開始後1年で45%、5年以内に52%が脱落するとのデータも示し、骨粗鬆症治療においてアドヒアランスの向上が重要であることを示した。
骨代謝マーカーの測定がアドヒアランスの向上に寄与することは英国の公的医療保険制度(NHS)で行われた文献のシステマティックレビューでも報告されているとし、「アドヒアランスを向上させ、しっかりと治療をしていく手段として骨代謝マーカーが有用」と述べた。マーカー測定により患者の病識が高まるなどの効果を挙げる一方、高齢者に多い腎機能低下の影響を受けやすいマーカーもあり注意が必要だとした。
骨生検と骨代謝マーカーとの比較についても報告した。BAPは類骨量、類骨幅、骨形成速度と有意な相関があるとの海外報告を説明。「骨形成マーカーは、骨の形態計測と相関している」と結論付けた。
また、アレンドロネートの治験(FIT試験)から1年後の変化を見たところ、大腿骨近位部骨折の相対リスクはBAPが0.61、P1NPが0.78、CTXが0.89にそれぞれ低下したが、BAPのみに有意差があったことも指摘した。

吸収マーカーは6 カ月ごとの制限

 骨形成マーカーの保険適用については、BAP、Intact P1NP、P1NP(total)、ALPアイソザイム(PAGE電気泳動法)のうち2項目以上を実施した場合、主たるもののみを算定するとのルールが設けられているが、測定回数に関する点数算定ルールは設けられてはいない。
一方、骨吸収マーカーである「NTX」(T型コラーゲン架橋-N-テロペプチド)、「CTX」(T型コラーゲン架橋-C-テロペプチド)、「TRACP-5b」(酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ-5b)などについては、点数算定は薬剤選択時と6カ月以内に1回、さらに6カ月後に薬剤を再選択する場合に限られるほか、「CTX」の薬剤効果判定は保険適用内容の解釈によってはHRT(ホルモン補充療法)とビスホスホネート薬に限定されている。
骨マトリックス関連マーカーの「ucOC(低カルボキシル化オステオカルシン)」は、点数算定は薬剤選択時と6カ月以内に1回、さらに6カ月後に薬剤を再選択する場合に限られる。
三浦氏は、治療薬テリパラチドの単回投与後、4週間で骨代謝マーカーの値が低下するとしたデータなどを報告。骨代謝マーカーは骨代謝状態をリアルタイムに反映する動的指標であり、骨吸収マーカーの点数算定を6カ月に1回に制限する現行ルールは、臨床実態にそぐわないとの認識を示し、保険ルールの見直しを今後の課題の一つに挙げた。さらにCTXは、保険適用内容の解釈によっては算定上の制限から「SERM製剤、デノスマブ(の治療効果判定)では点数算定できないことがあるかもしれない」との注意点も指摘した。

「25(OH)D」に測定意義

 三浦氏はまた、ビタミンDと骨との関連についても触れた。「ビタミンD不足は骨粗鬆症の重要なリスク因子」と述べ、体内栄養指標である「25(OH)D」(25-ヒドロキシビタミンD)の血中濃度を測定し、ビタミンDの摂取量を把握することが必要だと指摘。「25(OH)D」の血中濃度としては、「50nmol/L(20ng/L)以上」の維持を挙げた(図3)。

図3 骨とビタミンDの最新の知見

 厚生労働省の「統合医療情報発信サイト」では、30nmol/L未満はビタミンD欠乏、30〜50nmol/Lは不足、125nmol/L超は「有害な影響をもたらす可能性がある」―とする米国医学研究所委員会のデータを掲載していることを説明。日本人女性の半数が、50nmol/Lに満たないとするデータを示し、「ビタミンD不足は深刻」との見方を示した。
 「25(OH)D」は現在国内で1社が承認を取得し、ほかに「Access 25 (OH) Vitamin D Total」(ベックマン・コールター)などが承認申請中となっている。

(THE MEDICAL & TEST JOURNAL 2016 年12 月1 日 第1370 号掲載)

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