第25回 「マンスリー形態マガジン」 2013年5月号
『 バトル・ロワイアル in 大阪 』
前 略
新しい年度が始まり、1ヶ月が経ちますがみなさまは如何お過ごしでしょうか。 さて、私が厚生省(当時)に採用されたのは、7年間の医療法人勤務の後、1976年 国立大阪病院研究検査科でした。九州の片田舎から意気込んで大都会に転進したわけですが、配属先は血液検査室となり、それからのキャリアの起点となりました。大阪病院では、毎日院内で勉強会が開催され、学会発表や論文活動が大変活発に行われておりました。当時の壮絶なバトル・ロワイヤルなスケジュールの一部をご紹介します。
- 月曜日 早朝 : 「現代血液学」 輪読会(和文)
- 火曜日 早朝 : 「止血凝固学」 輪読会(和文)
- 水曜日 早朝 : 「免疫血清学」 血清室との輪読会(英文)
- 木曜日 早朝 : 「Atlas of Clinical Hamatology」 輪読会(英文)
- 金曜日 早朝 :「血液学最近の話題」
- 土曜日 早朝 :「骨髄像の報告会」
- ※不定期に英文輪読会(深夜)を開催。
To be continued !
草々
形態マガジン号キャプテン 阿南 建一
第25回 問題と解答
問題
第25回
CASE 1 の細胞像を確認して 1 〜 9 の細胞の同定を行ってください。
CASE 1の選択細胞 | |||||
---|---|---|---|---|---|
@ 骨髄芽球 D 桿状核球 H 単球 |
A 前骨髄球 E 分葉核球 I 幼若好酸球 |
B 骨髄球 F リンパ球 J 好酸球 |
C 後骨髄球 G 前単球 K 赤芽球 |
CASE 2 骨髄のPO染色(ベンチジン法)において以下の設問に答えてください。
1)Aの細胞像1-3の中で芽球における真の陽性所見はどれですか。
2)BのPO染色陽性細胞 1-2を同定してください。
CASE 2 A の選択肢 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
@ 1 | A 2 | B 3 |
CASE 2 B の選択肢 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
@ 幼若顆粒球 D 好酸球 |
A 幼若好酸球 E 好塩基球 |
B 幼若好塩基球 | C 好中球 |
今回のねらい
今回も骨髄の顆粒球系細胞の鑑別とPO染色の応用編です。顆粒球系の分化・成熟についてはDiggsら(1956)の血球の分化・成熟に伴う一般的原則に従って同定しましょう。そして細胞の大きさから核、細胞質所見に着目して同定を行ってください。
PO染色は、一般的に芽球が陽性所見を示しますが、真のPO染色陽性細胞と強陽性の細胞について考えてみましょう。
解説
- (BM-MG×1000)
(BM-MG×1000)
(BM-MG×1000)
(BM-MG×1000)
- (正解と解説)
【正解】1. E 分葉核球 2. A 前骨髄球 3. E 分葉核球
4. J 好酸球 5. H 単球 6. G 前単球 7. I 幼若好酸球
8. K 赤芽球 9. F リンパ球
【解説】
骨髄像においては、前骨髄球(2)と前単球(6)の鑑別が大きなポイントになります。共に芽球から分化しており、類似しているのは当然です。また、細胞の大きさは同等ですが、核・細胞質所見は全く異なりますのでしっかり同定しましょう。
- □ 前骨髄球の鑑別ポイント
- 細胞質には、旺盛なゴルジ野の発達が認められ、核の偏在性が顕著で、核は類円形を呈しており、核網工(クロマチン網工)は粗網状〜顆粒状で核小体を有します。また、細胞質は好塩基性でアズール(一次)顆粒は粗大となります。
- □ 前単球の鑑別ポイント
- 細胞質は、ゴルジ野の発達があまり認められず、核の偏在性は少なく、核は不整であり、核網工は繊細網状で、核小体は顕著(大きく・数も多い)となります。また、細胞質は好塩基性でアズール顆粒は微細となります。単球の分化は、単芽球から前単球を経て単球(5)に成熟していきます。この単球(5)には9時方向にうなり状の核不整がみられ、細胞質には核周囲と辺縁の間(矢印)に異なる色調(二重構造)がみられ、核周囲には微細顆粒が充満しております。
今回は、好酸球の幼若型(7;前骨髄球あたり)と成熟型(4;二分葉)を提示しましたが、幼若好酸球は骨髄球あたりから分類するのが普通です。また、ほかには分葉核球(1,3;好中性)、正染性赤芽球(8)、リンパ球(9)を提示しました。
- (Benzidine-base PO染色)
(Benzidine-base PO染色)
- (正解と解説)
【正解】1). A @ 1 2).B 1. A 幼若好酸球 2. D 好酸球
【解説】
PO染色における芽球の陽性所見(A)と好酸球の陽性態度(B)を提示しました。
(A)は、PO反応陽性の骨髄芽球の判定の設問です。- 1.は、陽性の単球(上)、芽球(下)は全体に陽性顆粒が散在してみえます。
- 2.は、陽性の骨髄球(下)、芽球(上)は5時方向のみが部分的陽性です。
- 3.は、陽性の好中球(右)、芽球(上)は3時方向のみが部分的陽性です。
隣接する陽性細胞が芽球に重なった場合、すべてが陽性のように見えますが、芽球の真の陽性細胞は1.で、2.と3.の陽性所見は隣接する陽性細胞が重なってまるで陽性のように見えます。従いまして、1.が陽性、2.と3.が偽陽性となります。また、(B)は、顆粒球系の中でPO反応が最も強い好酸球を提示してみました。1.が幼若好酸球(前骨髄球あたり)、2.は好酸球となります。
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