第70回 「マンスリー形態マガジン」 2017年2月号

『 大河、直虎の“おとわ” に注目 』

前 略

 今年のNHK大河ドラマは「おんな城主直虎」です。
   昨年は過去5年間で最高の視聴率を上げた「真田丸」で人気を博しましたが、今回の『おんな城主直虎』は早々に幼少期を務めた“おとわ”の演技に惚れ込み、おんな城主直虎の一生を見届けようかなと思っております。
   時は戦国時代から安土桃山時代にかけて、今川義元の支配下にあった遠江井伊谷(静岡県浜名湖のあたり)の女性領主の話になります。脚本を手がけた森下佳子さんは、「年表を頂いた時、徳川、織田、武田の欄はビッシリなのに肝心の直虎の欄はスカスカで、どうするねん !」と思ったそうです。昔から歴史は作られるとも言われ、誰かが命じられて書いた部分もあり、多分に創作が入っていることはよく耳にすることです。そこで森下さんは、直虎を知っている人が少ないのなら、思い切って私が“この人すごい!”と思える物語を作れるのではないかと腹をくくられたそうです。
   第1~4回までは武将たちの幼少期が放映されましたが、そもそも4回にわたることは珍しいそうです。これも子役らの演技に期待したものなのでしょうか。なかでも直虎の幼少期“おとわ” (ドラマのなかの仮名)役を演じた新井美羽ちゃん(10歳) に注目しました。脚本での“おとわ” は井伊家当主・井伊直盛の一人娘で、女の子とは思えぬ活発さで男まさりであったと紹介されています。美羽ちゃんの演じる“おとわ”は正しく活発で可愛いらしく明るい女の子のイメージで役柄にマッチしているようでした。“おとわ”のそばには亀之丞(後の井伊直親)、鶴丸(後の小野政次)らの子役らも名演技を披露してくれました。“おとわ”は亀之丞との縁組みがなされていたようですが、それもかなわぬこととなり、子供ながら許婚と結婚ができないのなら出家の道を選択し“次郎法師”という男性の名前が付けられました。尚、“次郎”とは井伊家を家督する者に与えられる称号だそうです。
   結局、直虎は生涯独身で城主として生きることになります。
   “おとわ”役に徹した美羽ちゃんの魅力は、馬を上手に乗りこなし、出家の際は実際に自分の髪を切り坊主に刈り上げたその勇気と役者魂にあります。何よりもあの“百万ドルの笑顔”に癒され、“おとわ”役は終わってしまいましたがこれからもファンの一人として注目していきたいと思います。
   おとわ、次郎法師を経た直虎はこれから険しい道を迎えていきますが、今度は直虎役の柴崎コウさんに期待したいところです。

参考資料:TVガイド.東京ニュース通信社.2017

草々

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 



著作権について

今回のねらい

 今回は、骨髄の細胞同定と症例の形態診断に挑みます。
細胞同定は、分化過程と類似細胞に目を配りながら行なって下さい。
   症例編は、末梢血、骨髄の形態所見に注意しながら行なって下さい。
形態所見のポイントにPAS染色の判定を考慮しながら診断を進めて下さい。
今回も選択肢がありませんので多くの情報から絞り込んで下さい。

問題

骨髄の細胞同定を行ってください。

1-1<問題1-A>

  • BM-MG×1000

1-2<問題1-B>

  • BM-MG×1000

1-3<問題1-C>

  • BM-MG×1000

1-4<問題1-D>

  • BM-MG×1000

検査データと末梢血、骨髄像より考えられる疾患何ですか。

2-1<設問1>

【所見】
【5-10歳.男性】
主訴:発熱、左関節痛
WBC2,200/μL、RBC221万/μL、Hb6.5g/dL、Ht21.4%、PLT3.7万/μL、NCC4.5万/μL

  • PB-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-PAS×1000

解答・解説

一口情報

 赤芽球系細胞(A)と顆粒球系細胞(B)を観察する場合、核所見が先か細胞質所見が先かということを考えてみましょう。私見ですが、結論として“形態変化の少ない方を優先する”ということになります。
   上記(A)はDNA合成障害によって核と細胞質の成熟に乖離が起こる場合があります。
   それは成熟乖離と言われ、細胞質は正規の成熟傾向にあるのに対し核がそれに伴っておらず核の成熟に遅延現象がみられるということです。
   (B)は分化・成熟障害や治療などによって細胞質の顆粒が極端に減少したり増加したりする場合があります。それは低(脱)顆粒や異常顆粒の状態としてみられます。
   すなわち、(A)は核の方に形態変化が起こりやすいということで、細胞質所見を優先にして同定することになります。一方、(B)の方は細胞質に形態変化が起こりやすいということで、核所見を優先して同定することになります。
   最終的には両者を併せて観察することになりますが、ワンクッション置いて観察するのも同定の戦略になるかも知れません。

問題 1

(正解と解説)
   骨髄の赤芽球系細胞、顆粒球系、リンパ球、それに非造血細胞の同定になります。血液細胞では分化、成熟過程を揺るぎなくしっかり捉えることが重要です。「一口情報」でも触れていますが、主として赤芽球系は細胞質の色調から、顆粒球系は核の状態から同定した方がスムーズにいけそうです。

【正答】

(case A) 1-好塩基性赤芽球、2-正染性赤芽球、3-リンパ球
(case B) 1-桿状核球、2-分葉核球、3-好塩基性赤芽球、4-多染性赤芽球
(case C) 1-巨赤芽球、2-多染性赤芽球、3-正染性赤芽球
(case D) 1-多染性赤芽球、2-多染性赤芽球、3-組織好酸球、4-リンパ球

【解説】

(BM-MG ×1000)



(case A)
1.と2.は赤芽球です。1.は細胞径15μm大で核網工は顆粒状、細胞質の色調が塩基性より好塩基性赤芽球、2.は10μm大で核網工はクロマチンが濃縮状、細胞質の色調が正染性より正染性赤芽球に同定しました。3.は14μm大で核網工は粗荒、細胞質は淡青色でアズール顆粒を有するリンパ球(中型)に同定しました。

(case B)
1.と2.は共に14μm大の好中球です。1.は核の短径と長径の比率が1/3未満の長さ、クロマチンの結節がさほど強くないことより桿状核球、2.は核にくびれがみられ、核の最小幅部分が最大幅部分の1/3未満で、クロマチンの結節強いことから分葉核球に同定しました。私見的に桿状核球については、核の片側陥没が1μm以上示すことも所見としています。3.は好塩基性赤芽球、4.は13μm大で核網工はクロマチンの凝集が強く、細胞質の色調は多染性のことより多染性赤芽球に同定しました。

(case C)
3個とも赤芽球です。1.は25μm大で細胞質の色調は正染性赤芽球になりますが、クロマチンの凝集はやや弱く、核と細胞質の成熟に乖離(成熟乖離)がみれるようで巨赤芽球(正染性)を思わせます(3.が対照です)。豊富な細胞質には塩基性斑点(リボソームの凝集)がみられます。2.は正常の多染性赤芽球、3.は正染性赤芽球です。

(case D)
1.は12μm大で核網工はクロマチンの凝集が残存し、細胞質も未だ多染性の色調を保持しているようで多染性赤芽球に同定しました。2.は多染性赤芽球です。4.はリンパ球でよいでしょう。3.は骨髄に時々観察されるもので、核は偏在傾向、核網工は繊細で、細胞質の顆粒は好酸性や好塩基性の大きな顆粒が充満しています。何よりも細胞質の辺縁が不明瞭なことが血液細胞とは異なる所見として非造血細胞を考え細網細胞系列を思わせます。
   そして顆粒の好酸性の色調から組織好酸球に同定しました。骨髄には組織好塩基球がありますので同様な扱いになるかと思います。



問題 2

   男児の例で、発熱と左関節痛を主訴に来院し、肝脾腫大、汎血球減少を指摘され骨髄検査が施行されました。
骨髄穿刺で有核細胞は4.5万/μLと低形成でした。

【解説】

(PB-MG ×1000)

(BM-MG ×1000)

(BM-MG ×1000)

(BM-PAS ×1000)

【末梢血液像所見】
   白血球数減少(2,200/μL)の末梢血液像で芽球は8%みられました。

【骨髄像所見】
   低形成の骨髄(4.5万/μL)は芽球が98%みられました。芽球はやや大小不同性で、N/Cは高い傾向にあり、核網工は粗網状、核形不整は顕著で一部に核小体を認めました。細胞質は好塩基性で空胞が顕著にみられ、アズール顆粒は認めないようでした。

【特殊染色】
   芽球はPO染色、EST染色に陰性でPAS染色に点状(dot状)の陽性がみられました。

【染色体所見】
   46,XY

【表面形質】
   CD10・CD19・CD79a・HLA-DR(+)、smIg/cyμ(-)

【臨床診断】
   芽球は末梢血に8%みられ、骨髄では98%と著増しており、それらはPO染色やEST染色に陰性でしたが、PAS染色に点状陽性がみられたことよりALLが疑われました。顕著な空胞は中性脂肪を考慮するとバーキット白血病も考えられましたが、表面形質で表面免疫グロブリンや染色体異常も認めなかったことから除外されました。
   結局、ALLに発現するB細胞性の表面形質が認められたことより前駆リンパ球性白血病のなかのBリンパ芽球性白血病(B-ALL)と診断されました。PAS陽性所見の判定は、本例のような強陽性態度(点状や塊状陽性)はALLを診断づける所見であり、同じB細胞性のバーキット白血病ではこのような陽性態度は示さず通常は陰性です。尚、臨床症状の発熱は腫瘍熱が関節痛は関節内への出血が考えられ、肝脾腫は定かではありませんが、増殖した白血病細胞によって代謝機能に異常な亢進が起こり、肥大化するのではないかと推測されます。



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