2018年09月04日

「第58回日本臨床化学会年次学術集会」報告ページを掲載しました。

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2018年8月24日に名古屋国際会議場にて弊社共催ランチョンセミナーを開催しました。
「基準範囲設定の調和化:世界と日本の現状」と題して、座長に九州大学の康 東天 先生、演者に山口大学の市原 清志 先生をお迎えしてご講演していただきました。非常に蒸し暑い中ではありましたが、150席満員で、立ち見やお弁当なしでご聴講いただいた方もおられ、大盛況のうちに終えることができ、共用基準範囲の注目度が高いことを改めて感じさせられました。

座長 康 東天 先生演者 市原 清志 先生
満員の会場

第58回日本臨床化学会年次学術集会  ランチョンセミナー4 】
【日      時】 2018年8月24日(金)12:30 ~13:20
【会      場】 名古屋国際会議場 MAP
第4会場(2号館3階 会議室 232・233)
【共      催】 第58回日本臨床化学会年次学術集会 / ベックマン・コールター株式会社
【演      題】 基準範囲設定の調和化:世界と日本の現状
【座      長】 康 東天 先生(九州大学大学院医学研究院 臨床検査医学分野 教授)
【演      者】 市原 清志 先生(山口大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 生体情報検査学 名誉教授)
【整 理 券】

ランチョンセミナーは整理券制です。
配布時間: 8 月24 日(金) 9:00 ~ 
※ 無くなり次第配布終了

【要      旨】

 主要な臨床検査は国際的に標準化されたが、基準範囲(RI)は病院毎に異なる。原因は(1)適切な健常対象者の選別の困難さ、(2)基準範囲計算法の相違、(3)不十分なデータ数での設定、などの事情による。2005年IFCCに基準範囲判断値委員会(C-RIDL)が設置され、その任務として(1)RIの概念と設定過程・統計手法の再評価、(2)データ数確保に必要な多施設共同調査プロトコールの策定、(3)RIに影響する性・年齢・人種差等の分析、(4)RI設定値の標準化対応、等が掲げられた。C-RIDLはその活動の一つとして、2009年にIFCC血漿蛋白委員会と共同で、主要72検査を対象に東南アジアRI調査を実施した。基本方針は、健常者の2次除外基準の明確化、標準化対応検査ではその正確度を確認しRIの共用化を図ることであった。その際、分析誤差の影響を排除すべく全試料を東京で一括測定した。その結果、炎症マーカや脂質等1/3の検査で地域・人種差を認め、全検査のRI共用化は困難と判明した。
 その結果から、検査値の地域・人種差、およびRI設定用統計手法の再評価を世界規模で調べる必要性が明らかとなった。そこでC-RIDLは2011年に、RI設定調査を多施設共同で、調和化して実施するプロトコールを策定した。その基本戦略は、正確に値付けしたパネル血清を全参加国のラボに配布し、その共通測定によりRIを校正しその標準化を達成することであった。また標準化未対応検査も回帰直線で施設間差を調整し、任意の参加国の基準値に他の国の値を揃えることで国間比較を可能とした。調査は、主要50検査を対象に2012年に開始、現在5大陸20ヶ国の参加がある。昨年12ヶ国が調査を終え次の中間結果を報告した:1)大多数の検査で大きな国間差を認め、世界共通のRIとできる検査項目は限られる、2)どの国でもパラメトリック法で安定してRIが求まるが、ノンパラ法ではRIが極端値に影響されやすい、3)基準値の分布型は検査項目毎に決まっており、分布型に国間差はない、4)栄養・炎症・筋肉マーカ検査には潜在異常値除外法の適用が必要、5)検査の性差・年齢差に人種・国間差を認めないが、BMIの検査値への影響度に国間差を認める。最終報告は20ヶ国の結果が揃う来年度を予定している。
 このRI設定調和化の動きに逆行する形で、健常者から設定する直接方式に異を唱えるオーストラリアは、日常検査情報を利用する間接方式で2014年にRIを設定し全国利用している。現在同じ方式をドイツやオランダが検討しており、IFCCもそれに同調する方針を示している。しかし方法論に多数の矛盾点があり今後議論になると思われる。
 一方国内では、2014年に日本臨床化学会他が設定しJCCLSが承認した共用基準範囲の存在で、RI調和化の問題は解決している。しかしその全国レベルでの利用はまだ十分でない。これは、一部検査で臨床判断値と乖離することを理由に採用に消極的な施設があるためで、その背景と今後の対策についても述べる。


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