2018年3月14日掲載

Vol.21血球計数におけるNRBC測定(2)

CBCを語ろう Talk CBC 血球計数におけるNRBC測定(2)

血球計数におけるNRBC測定(2)

 今回は、白血球(WBC)測定で遭遇するさまざまな細胞干渉について解説します。血球計数測定では、白血球数を測定する際、同程度の細胞体積の赤血球(RBC)は、CBC溶血剤を添加することで溶血し、裸核状態の白血球のみを計測するため、正確なWBC数の算出が可能です。一方、溶血抵抗性を呈する細胞が存在する場合、これらはWBCバス内に一定の体積を有した細胞群として存在し、WBCとして計測されるため、WBC値は正の誤差を有した測定値となります。このようにWBC測定時には、細胞干渉を確認することが必要となり、細胞干渉の確認手順は以下の通りです。

  • 細胞干渉の有無を確認する。
  • 干渉物質の識別を行う。
  • WBC値の判定を行う。

 また、実際の細胞干渉の確認手順については、自動血球計数装置 UniCel DxH シリーズ(以下DxH)の測定例を用いて解説します。


 (1) WBC ヒストグラムを用いた細胞干渉の検出

 細胞干渉に有無については、WBC値などのCBCデータから読み取ることは難しいため、WBCの粒度分布図(以下ヒストグラム)から干渉の有無を確認します。また、測定情報として細胞干渉(Cellular Interference)、血小板凝集(PLT Clumps)などメッセージが付記されますのでこれらの確認も必要となります。
DxHのWBCヒストグラムは、256チャンネルの高分解能で表示され、詳細な細胞分布情報を提供していますので、干渉などによる細胞分布パターンの変化は明瞭に確認ができます。
 細胞干渉におけるWBC ヒストグラムの分布パターンの変化について、血小板凝集検体を例に取り説明します(図1)。血小板凝集検体では、凝集塊が一定の体積を有することから白血球数として計測がなされます。これらの凝集塊は、WBCヒストグラムでは35fL附近に異常なピークとして出現し、正常検体とは異なる分布パターンを形成し ます。また、NRBCや巨大PLTなどが出現する場合においても同様なパターンを形成します。このようにWBCヒストグラムは、細胞干渉の検出には優れていますが、干渉物質を識別することはできないため、他分析法や用手法による確認が必要となります。


 (2) NRBC スキャッタープロットを用いた細胞干渉の検出

 DxHにおけるNRBC測定は、前号で記述した通り、VCSnテクノロジーにおける7種類の測定パラメーター(電気抵抗法、高周波電導度、5種類のレーザー散乱光情報)を用いてNRBCの計測と干渉物質の検出を行います。また、NRBC測定値以外に2種類のNRBCスキャッタープロットが表示され、これらの測定情報から干渉物質の識別が可能になります。血小板凝集検体や有核赤血球出現検体では、WBCヒストグラムにおいては35fL附近に異常なピークが出現しますが、NRBCスキャッタープロットを確認することで血小板凝集検体や有核赤血球の識別を容易に行うことができます(図2)。

 このようにNRBCスキャッタープロットでは、干渉物質毎に異なるパターンを呈しますので、これらの干渉物質の識別が容易で、その後の再検査や他分析法による確認などを迅速に行うことが可能となります(図3)。



(3) DxHのNRBC測定における正確性

 NRBC測定の課題として細胞形態学的に類似した細胞では、血球計数測定においても細胞同定が難しい場合があり、測定値の乖離が認められることがあります(図4)。しかし、DxHのNRBC測定では、有核赤血球やさまざまな干渉物質との識別を行い、正確な細胞数の算定がなされますので用手法検査との相関において良好な結果が得られています(図5)。


 また、干渉の影響を受けるWBC値においても同様に補正WBC値との相関も良好です(図6)。
 DxHのNRBC測定法は、VCSnテクノロジーによって詳細な細胞分析を行うことから従来鑑別が難しいとされていたさまざまな細胞干渉物質の検出と正確なNRBC比率やWBC数の算定を行うことが可能となりました。


 次回は、引き続き血球計数におけるNRBC測定について解説します。

引用文献
・阿南建一 他:エビデンス血液形態学, p26, 近代出版,2014年
・豆田清美、山口直子、倉本智津子 他 :ユニセルDxH800におけるNRBC測定チャンネルの有用性,第63回日本医学検査学会, 2014年


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UniCel DxHシリーズ コールターセルラーアナリシスシステム
製造販売届出番号:13B3X00190000038

MAPSS-MKT-202106-1000

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