第109回 「マンスリー形態マガジン」 2020年5月号

『歌い継がれる心と北原白秋』


  現在、新型コロナウイルス感染拡大が続く中、外出自粛でのテレワークや医療現場で日々奮闘されていらっしゃる皆さまは大変なご苦労かと思います。私が住む福岡県の感染者数は、減少傾向にありますが、今が我慢の時であり、私たち一人一人の行動で家族や大切な人を守ることができますので、緊急事態宣言が解除されるまで巣ごもりを続けたいと思います。
  先日、自宅の本棚を整理していた際、手垢のついた古びた詩集“思ひ出”を手にして、久しぶりに紐解いてみました。それは、大変懐かしく、当時の記録がよみがえり心温まる気持ちになりました。この“思ひ出”は、北原白秋が1911年(明治44年)に幼少年時代を過ごした故郷 柳川の思い出を描いた詩集です。北原白秋(以下 白秋)は、1885年(明治18年)福岡県山門沖端町(現 柳川市)に酒造業を営む北原長太郎の長男(本名 隆吉)として生まれ、県立伝習館中学(現 福岡県立伝習館高校)在学中から詩歌に熱中し、上京後の1909年 処女誌集“邪宗門“を発表、二作目の”思ひ出”は文学界から高い評価を受け、名実ともに詩壇の第一人者となりました。また、白秋は、詩歌だけではなく、童謡、児童詩などの優れた童謡作品を発表しており、“♪あめあめ ふれふれ かあさんが じゃのめでおむかえ うれしいな ・・・ ♪“、これは、皆さんが一度は耳にしたことがあると思いますが、1925年 北原白秋:作詞、中山晋平:作曲による童謡歌です。この“あめふり“は、どなたでも口ずさむことができ、100年の時を経た今でも親から子へ歌い継がれています。
  2006年(平成18年) 文化庁と日本PTA全国協議会が、親子で長く歌い継いでほしい童謡・唱歌や歌謡曲を日本の歌百選として選出し、“思ひ出”、“からたちの花”、“この道”、“揺籃のうた”といった白秋の作品も含まれています。また、“世界に一つだけの花(SMAP)”、“時代(中島みゆき)”なども選出されており、老若男女問わずに幅広い世代で共感できる歌が選出されています。私たちは、新型コロナウイルス感染についてさまざまなメディアから状況を知ることになりますが、どうしても気持ちが沈みがちになります。そんな時には、上述した日本の歌100選やお気に入りの歌を口ずさむことで、日々の生活に少しでも灯りをともしたいと思います。
  1985年(昭和60年)福岡県柳川市に白秋生誕100年を記念して北原白秋記念館(資料館)が開設されました。入口には、チャップリンに似た等身大の白秋が優しく出迎えてくれますので、終息の折には一度お訪ねいただければと思います。


♪菜の花畠に 入り日薄れ 見渡す山の端 霞深し‥♪
「おぼろ月夜」(1914)
(2020.3.車中から.福岡県行橋市)


♪山のふもとの 小さな村に 咲いたかわいい  れんげ草よ‥♪
「れんげ草」(2000)
(2020.3.車中から.福岡県行橋市)

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一


著作権について

今回のねらい

  細胞編は、骨髄像において類似細胞を出題しました。なかには正常型と異なる形態を示すものもあり、それがどのような状況にあるのかも推測する必要があります。


  症例編は、僅かな検査所見ですが、光顕的診断に至るまでの必要な検査や形態所見について考えて下さい。また、鑑別を要する疾患とその鑑別ポイントについても考えてみて下さい。本例は新しい治療法の開発が待たれる病型であるようです。

問題

骨髄の細胞同定を行なって下さい。

1-1<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。

  • BM-MG.1000

1-2<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。

  • BM-MG.1000

1-3<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。

  • BM-MG.1000

1-4<設問1>骨髄の細胞同定を行なって下さい。

  • BM-MG.1000

この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。また、鑑別する疾患とそのポイントも考えて下さい。

2-1この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。また、鑑別する疾患とそのポイントも考えて下さい。

【中高年.男性】
WBC128,900/μL、RBC256万/μL、Hb9.0g/dL、Ht16.5%、PLT5.2万/μL、NCC20.6万/μL、MgK.0/μL、Fbg140mg/dL、FDP>150μg/mL

  • PB-MG.1000

  • BM-MG.1000

  • BM-MG.1000

  • BM-PO/PAS.1000

解答・解説

問題 1

今回は、骨髄像の注意喚起を促す細胞を提示しましたのでご検討下さい。

【正答】
A-1.2.リンパ球、3.多染性赤芽球、B-1.2.骨髄腫細胞、C.巨大な前骨髄球、D-1.リンパ球、2.単球

【解説】

A-1.2.細胞径11μm大、赤血球よりやや大きく、円形核で核網工は粗荒、細胞質の一部に水疱状の突起がみられます。大きさは小型、核網工が粗荒により成熟の小リンパ球と思われます。
A-3.二個は同じ細胞で細胞径13μm大、円形核は中心性でクロマチンの凝集塊がみられます。細胞質は多染性の色調から多染性赤芽球と思われます。

B-1.2.多発性骨髄腫 IgG(k)(形質細胞骨髄腫)にみられた骨髄腫細胞です。1.細胞径30μm大の大型、2.細胞径20μm大です。これらの細胞には豊富なRNAにより細胞質は濃紺色を呈し、僅かに空胞と一部顆粒を認めるようです。正常の形質細胞は10~20μm大で、濃紫青色の細胞質は核周明庭を有しますが、1.は大型で核小体を有し、明庭が不明瞭な細胞質は濃紺色で腫瘍性増殖がうかがえ、2.も同様と考えます。

C.細胞径30μm大の大型、核偏在と粗大なアズール顆粒(一次顆粒)を有することから巨大な前骨髄球と思われます。正常の前骨髄球は15~20μm大で遙かに巨大化しており、おそらく細胞分裂に異常を来したことが推定されそうです。本例は、薬剤によって顆粒球系に成熟停止が生じ、好中球までの分化がみられなかった症例です。

D-1.細胞径13μm大、核形不整がみられ、核網工は粗荒、細胞質は淡青色でアズール顆粒が散在性であることからリンパ球と思われます。2.細胞径21μm大、核は馬蹄形で核網工は繊細、細胞質は灰青色で微細なアズール顆粒が充満してみられることから単球と思われます。

問題 2

本例は中高年の男性で、初診時は、白血球数の著増(128,900/μL)と、貧血および血小板減少を認めました。フイブリノゲンの低値、FDP高値などから線溶亢進型DICの併発を考えました。

【解説】

(PB-MG.1000)

(BM-MG.400)

(BM-MG.1000 )

(BM-PO/PAS.1000)

A.[PB-MG.1000] 白血球数著増(128,900/μL)のもと芽球は72%と増加していました。芽球は顕著な核形不整や明瞭な核小体を有し、アウエル小体は不明でした。芽球には核内にカップ様に形容される形態がみられました。
B.[BM-MG.400] 骨髄は正形成、芽球は95.6%と著増していました。
C.[BM-MG.1000] 芽球は、核形不整や核内には末梢血と同様にカップ様の形態がみられ、アウエル小体は不明でした。
D.[BM-PO/PAS.1000] 骨髄の芽球は、PO染色に陰性で、PAS染色も陰性でした。

【臨床診断】
骨髄で増殖する90%以上の芽球は、PO染色の陽性が3%未満でしたが、CD13、CD33、CD56が陽性であったことからAML-M1を考えました。さらに芽球の核内がえぐられたカップ様の形態を有していたことからカップ様AMLを疑い、FLT3-ITD(FMS-like tyrosine kinase 3-internal tandem duplication)遺伝子変異を認めたことから、AML with cup-likeと診断されました。本型は、Kussickら(2004)により提唱されたもので、芽球の核内のカップ様の原因は、ミトコンドリアの集簇、巨大な迷路状粗面小胞体の存在などと言われています。カップ様の形態基準は、核内でカップ様の核陥没が核径の25%以上を占め、芽球の10%以上を呈するとあるようです。カップ様形態は核小体に類似しますが、それに比べ大型であり、核のえぐれが一部にのみに肥厚してみえることが異なるように思われます。本例は急激な経過をたどりましたが、本型は予後不良とも言われます。

 

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