第75回 「マンスリー形態マガジン」 2017年7月号

『 ヒョウモンダコ触る?‥ソレダメ! 』

 今回は、海の小さな殺人鬼「ヒョウモンダコ(豹紋蛸)」を取り上げました。
  “ヒョウモンダコ って何 ?”先日、地元のTV放映で福岡県糸島の海岸で発見されたことを知り、危険性海洋生物ということでしたので少し情報を集めてみました。
  ヒョウモンダコはもともと西太平洋熱帯域や亜熱帯域に分布し、浅い海の岩礁、サンゴ礁などに生息しているようです。地球温暖化の影響で九州では沖縄をはじめ全域に発見されているようです。
 体長は10cmほどの小さなタコですが、体色をすばやく変化させ、周囲の岩や海藻にカモフラージュし、危険を察すると青い輪のような模様が全身を覆いヒョウ柄に変身することから名付けられたようです。大きさはイイダコ位のようですので捕獲には十分に注意が必要です。
  日本では2015年秋、日本海の若狭湾沿岸で捕獲されたと紙上で報じられ、さかのぼること2009年以降31件ほど発見されているようです。ヒョウモンダコは唾液にフグと同じテトロトドキシンをもっており、噛みつかれるとテトロトドキシン中毒死することがあり、危険性海洋生物は“殺人鬼”に豹変します。テトロトドキシンは同量の青酸カリウムの500倍から1000倍の毒性をもっており、2~3mgの摂取で死に至るとされます。噛まれると運動神経がマヒし、言語障害、嘔吐の症状が起り、重症の場合は噛まれてから短時間(90分)で呼吸困難になり死に至るそうです。ヒョウモンダコは浅瀬の岩場や石と石の間、また空き缶の中に居るようですので要注意です。
  もし噛まれたら救急車を呼びますが、その前の処置として指で傷口から毒を絞り出し、猛毒なので口での吸い出しは禁止です。呼吸筋がマヒし呼吸困難な場合は人工呼吸を行い救急車を待つことになります。
  また、食しても危険のようですので、タコが食べたいなら安心安全なタコを食べましょう。
  これから海のシーズンです、特にお子さんの海辺の遊びには気をつけてあげてください。

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 



著作権について

今回のねらい

 今回は、骨髄の特殊(細胞化学)染色と症例の光顕的診断に挑みます。
特殊染色は、PO染色、PAS染色、鉄染色、NAP染色の反応所見から疾患を考えます。一部については僅かな情報を参考に、また問題点についてはそのポイントを述べてください。
   症例編は、末梢血、骨髄、リンパ節生検のMG染色およびPO染色から予測される疾患を考え、追加の検査を予測し疾患を絞ってみてください。

問題

第75回 特殊染色所見の判定評価と考えられる疾患は何ですか。尚、問題点のある例はそのポイントを、Dについては併発疾患を述べて下さい。

1-1<設問1>

  • (所見:EST/PAS染色は陰性)

1-2<設問1>

1-3<設問1>

1-4<設問1>

  • (所見:初診時CML例)

末梢血・骨髄・リンパ節生検より検査の進めと考えられる疾患は何ですか。

2-1<設問1>

【所見】
【60-65歳.男性】主訴:頸部リンパ節腫脹
WBC26,000/μL、RBC445万/μL、Hb15.0g/dL、Ht45.3%、PLT20.1万/μL、NCC14.7万/μL
PO染色・PAS染色・EST染色(すべて陰性)

  • PB-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-PO×1000

  • LN biopsy-MG×1000

解答・解説

問題 1

(正解と解説)
   末梢血、骨髄の特殊染色の判定評価です。提示例はPO染色(A)、PAS染色(B)、鉄染色(C)、
NAP染色(D)です。

【解説】

A
B
C
D
(case A)
骨髄のPO染色です。
中央のPO強陽性の細胞を対照にすると周囲の芽球は陰性のようです。芽球は増加傾向にありPO陰性の急性白血病、すなわちALL、PO陰性のAMLが考えられます。本例は、幹細胞由来のCD34、CD117を含む骨髄系マーカーが証明されたことよりAML-M0と診断されました。問題は対照の細胞が好酸球であることです。好酸球はもともと内因性PO活性が強く経時的変化を受けないことより、本例が古い標本によって芽球が陰性化したことも考えられます。従って、本例を新鮮な標本であることの裏付けには好中球を陽性対照にすべきです。好中球は時間の経過とともに酵素活性が失活しますので、PO陰性芽球の真実性が高まることになります。

(case B)
骨髄のPAS染色です。
赤芽球の成熟過程がうかがえ3時方向にびまん性陽性の成熟赤芽球がみられます。赤芽球は通常PAS染色に陰性のことが多く(鉄欠乏性貧血やβ-サラセミアのごく一部に陽性あり)、このように陽性の場合は腫瘍性を疑う所見になります。本例はMDSの症例であり、納得いく所見かと思われます。腫瘍性所見では、未熟型や幼若型は顆粒状に、成熟型はびまん性に染まることがポイントです。

(case C)
骨髄の鉄染色です。
骨髄ではマクロファージが鉄顆粒を貪食し成熟赤芽球に補給しているシーンとして“赤芽球島” を観察することがあります。その鉄顆粒は鉄染色でベルリン青(プルシアン青)の不溶性沈殿物が集合したもので、本例は過剰鉄の状態で鉄の利用能の悪さがうかがえます。本例は環状鉄芽球を伴ったMDS(後天性)と診断されたものですが、先天性の場合はビタミンB6欠乏による鉄芽球性貧血を考えることになります。

(case D)
末梢血のNAP染色です。
初診時CMLの例です。白血球数の著増(実際192,100/μL)がうかがえ、好中球(76%)、好酸球(3%)、好塩基球(9%)、幼若顆粒球(12%)で、好塩基球は17,280/μLと著増していました。ただCMLにしてはNAP活性の高値が合致しません。本例は高齢で重症肺炎を併発しており、それによる炎症反応がNAP活性の高値をもたらしていたことが考えられます。ちなみにCRPは高値(20.1mg/dL)であり、肺炎完治後CRPは基準域にもどりNAP活性はCMLの慢性期にみられる低値を示しました。高齢と感染症には注意が必要です。



問題 2

   高齢の男性例。頸部リンパ節腫脹を近医にて指摘され、精査のため当院に紹介来院し、白血球増加とリンパ球増加を指摘され入院されました。

【解説】

(BM-MG ×400)

(BM-MG ×1000)

(BM-PO ×1000)

(BM-PAS ×1000)

【末梢血液像所見】(A図)
   白血球増加(26,000/μL)の血液像でリンパ球は70.0%(18,200/μL)と増加していました。それは中型で、N/C比は低く、核形不整は軽度で核網工は粗荒でした。

【骨髄像所見】(B図)
   正形成気味の骨髄(14.7万/μL)でリンパ球は68.0%と増加していました。
リンパ球は中型で、N/C比は全般に低く、核形不整は軽度、核小体は不明瞭で核網工は粗荒のようで成熟リンパ球に同定しました。形態所見より慢性リンパ性白血病(CLL)を疑いました。

【特殊染色】(C図)
   PO染色は陰性で、他にPAS/EST染色はすべて陰性でした。

【リンパ節生検MG染色】
   小型で成熟リンパ球の増加が目立ちます。

【リンパ節生検HE染色】
   腫瘍性細胞(小型リンパ球)のびまん性増殖がうかがえます。

【染色体所見】
   46,XY

【表面形質】
   CD5・CD19・CD20・CD23(+)、smIgM+D、HLA-DR(+)

【臨床診断】
   末梢血と骨髄では成熟リンパ球が持続性に増加(5,000/μL以上)しており、リンパ節生検でも小型リンパ球の増殖がみられました。表現型はB細胞性であったことよりB-CLLと診断されました。
本型はB cellでありながらCD5(T cell マーカー)の発現がみられ、CD20や表面免疫グロブリンの発現が弱いことも特徴です。



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