第104回 「マンスリー形態マガジン」 2019年12月号

『熊本城、希望のかけら』

  熊本市の「熊本城ホール」で、11月2日(土)~3日(日) 第54回日臨技九州支部医学検査学会が開催されました。「熊本城ホール」は、熊本市中央区桜町の再開発施設「SAKURA
MACHI Kumamoto」に位置し、メインホール含め大小のホールや展示スペースがあり、この学会がホールのこけら落としになったそうです。今回、私はベックマン・コールターのランチョンセミナーで講演することになり、当日は立ち見ができる盛会の中で終えることができました。学会場の近くには熊本城がありますが、ここは加藤清正(かとうきよまさ)が慶長6年(1601年)から7年の歳月をかけて築城した日本三名城のひとつです。
  熊本城は、2016年4月14日21時26分から発生した平成28年熊本地震により、甚大な被害を受けました。この地震で、人的被害として、死者 211名、重傷者 1,142名、軽傷者 1,604名、建物被害は、全壊家屋 約8千棟、半壊家屋 約3万4千棟、一部損壊家屋は約15万3千棟など合わせて約21万棟に被害が及び、地震から3年半が過ぎましたが、災禍を思うと今でも心が痛みます。
  さて、熊本城ですが、復旧・復元のための「熊本城災害復旧支援金」や「復興城主」制度が始まっています。「復興城主」制度は、デジタル化した芳名板や特典を設けた熊本城への寄附制度です。私は、被災後の熊本城を訪れ「桜の馬場、城彩苑」の一角にある「復興城主」コーナーでささやかながら寄付をさせていただきました。現在「復興城主」制度による寄付金は20億円を超えたそうですが、熊本城郭全体の修復費用は数百億円とも言われ、これから何十年もかかるそうです。熊本城は、今までも、そしてこれからも熊本のみなさまのシンボルであり、心の支えです。往時の威容を一日も早く取り戻していただくことを望みながら、来年早々、手元に届く城主証・城主手形を受け取りたいと思います。


武者返しを模った(仮)城主手形

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


著作権について

今回のねらい

  今回は、細胞同定と症例検討を提示しました。

細胞編は、骨髄像から類似細胞の鑑別に挑戦します。
症例編は、僅かな検査所見ですが、光顕的診断に至るまでの必要な検査や形態所見について考えて下さい。

問題

骨髄像の細胞同定を行なって下さい。

1-1<問題1-A>

  • BM-MG×1000

1-2<問題1-A>

  • BM-MG×1000

1-3<問題1-A>

  • BM-MG×1000

1-4<問題1-A>

  • BM-MG×1000

この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。

2-1<設問1>

【所見】
【1~5歳.男児】主訴:関節痛、四肢の痛み、リンパ節腫脹(-)、PO染色(-)
WBC5,400/μL,RBC400万/μL,Hb10.1g/dL,Ht30.5%,PLT22.4万/μL,NCC12.6万/μL

  • BM-MG×1000

解答・解説

問題 1

   骨髄像の細胞同定を行なって下さい。

【解説】

(BM-MG×1000)



今回は、骨髄像の細胞同定に挑戦します。

【正答】
A-1.前骨髄球、2.前単球 B-1.前単球、2.3.多染性赤芽球、4.リンパ球 C-1.骨髄球、2.単球、3.4.分葉核球、5.多染性赤芽球、6.桿状核球 D-1.骨髄芽球、2.桿状核球

【解説】
A-1.細胞径28µm大の大型、核は偏在し、核形は類円形、クロマチン網工は顆粒球状で核小体を認めます。
細胞質は、好塩基性で太めのアズール顆粒を認めることから前骨髄球と思われます。
2.細胞径25µm大、核は偏在し、核形不整は軽度、クロマチン網工はやや繊細で核小体を認めます。
細胞質は好塩基性で繊細なアズール顆粒を認め、前骨髄球を思わせますが、核形の不整とクロマチン網工の繊細さや微細顆粒を有することから前単球と思われます。

B-1.細胞径26µm大、核は中心性、核形不整は軽度、クロマチン網工は繊細で核小体を認めます。細胞質は中等度の好塩基性で微細なアズール顆粒を認めることから前単球と思われます。2.3.は多染性の細胞質にクロマチン凝集を有する多染性赤芽球と思われます。4.は周囲から押されたようにみえますがリンパ球と思われます。

C-1.細胞径16µm大、核は円形、クロマチンは軽度の凝集がみられ、細胞質の好塩基性は薄く、好酸性の色調と小型顆粒(二次顆粒)を有することから骨髄球と思われます。2.細胞径14μm大、クロマチン網工はやや繊細、軽度の好塩基性の細胞質には微細なアズール顆粒や空胞を認めることから単球と思われます。
3.4.は、両方ともに過分葉傾向の分葉核球と思われます。5.細胞質には不染部がみられ 、ヘム合成障害が疑われる多染性赤芽球と思われます。6.細胞径12µm大、核のくびれは、みられますが棒状で、クロマチンの結節状と好中性の色調から桿状核球と思われます。

D-1.細胞径15µm大、核は円形で偏在傾向、クロマチン網工は繊細で核小体を認めます。細胞質は、好塩基性で顆粒を認めないことから正常型の骨髄芽球と思われます。2.細胞径13μm大、核形は棒状として捉えることで桿状核球と思われます。



問題 2

   この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。

【解説】








男児の骨髄標本のMG染色です。関節痛、四肢の痛みで来院しました。現症では腹部腫瘤が認められ、リンパ節腫大は認めず、血算では、貧血を認めるほかに異常所見はありませんでした。

【解説】
A:[MG×600] 4個の核影(smudge cell)がみられる中、N/C比が高い大型細胞がみられます(矢印)。

B:[MG×600] 中央左に細胞の集塊と5時方向にN/Cが高い大型細胞がみられます(矢印)。
集塊細胞はリンパ球を思わせ、偽ロゼット形成が窺われます。

C:[MG×1000] 中央上の中型細胞はN/C比が高く、クロマチンがやや繊細網状です(矢印)。

D:[MG×1000] 中央左下の2個はA.~C.と同じ細胞と思われ、それらは、細胞接着面で相互に圧排像を呈しています(矢印)。

【形態診断】
骨髄に散見される細胞は、形態的に血液細胞というよりも腫瘍細胞が考えられ、核影、偽ロゼット形成や圧排像の形態からがん細胞の骨髄転移が考えられます。B.のリンパ球系の細胞もおそらくがん細胞と思われ、総合的に考えますと神経芽腫が考えられます。これらはPO染色に陰性でした。

【臨床診断】
患者の腹部腫瘤は、CT、骨シンチグラフイ検査や尿中カテコールアミン代謝産物のドーパミンが高値であり、右副腎原発の悪性腫瘍が確認されました。骨髄をはじめ遠隔転移があり、神経芽腫のStageⅣと診断されました。追加検査でB、T細胞系のマーカーは陰性でした。神経芽腫の細胞は非上皮性結合を呈するため、上皮性結合ほど重積や集簇することは少なく、特に散在性に観察された場合は、ALLとのが鑑別が重要となります。



これから先のページでは、医療関係者の方々を対象に医療機器・体外診断薬等の製品に関する情報を提供しております。当社製品を適正に使用していただくことを目的としており、一部の情報では専門的な用語を使用しております。
一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承ください。

医療関係者の方は、次のページへお進みください。
(お手数ですが、「進む」ボタンのクリックをお願いします)