第103回 「マンスリー形態マガジン」 2019年11月号

『左遷から学問の神さまへ』

今回は、前回に続き菅原道真公の生涯について諸説から紹介します。
  菅原道真公は、福岡の地でなぜ学問の神様として祀られているのでしょうか。また、“太宰府”とは、九州の筑前国筑紫郡(現在の福岡県太宰府市)におかれた政府機関(役所)で、外交や防衛などの機能を持ち、九州および壱岐・対馬を統括していました。
  さて、道真公は、承和12年(845年)6月25日京都に生まれました。菅原家は、代々続く学問の家系で、道真公は幼少の頃より学問の才能を発揮し、5歳で和歌を詠まれるなど神童と称され、18歳で現在の大学に相当する文章生(もんじょうしょう)に合格し、33歳で大学教授の文章博士に就任しました。その後、菅原家が設立した私塾を引き継ぎ、門下生は100名を超えていたそうです。
  時の天皇 宇多天皇は、このような道真公の聡明さに魅かれ、朝廷の要職に登用しました。その後、右大臣にまでのぼりつめましたが、当時の朝廷の貴族たちは学者出身の道真公の出世に嫉妬するものが多くおりました。宇多天皇が退任し、息子の醍醐天皇が即位しましたが、その際に政敵たちが企てた陰謀によって道真公は地方の行政機関である太宰府の下級役人に任命され、左遷となりました。太宰府に赴任した道真公は、衣食もままならぬ生活を強いられ、わずか二年で病に倒れ、延喜3年(903年)2月25日、59歳の生涯を終えることになりました。
  道真公の死後、臣下の味酒安行(うまさけ やすゆき)が道真公を祀り、延喜5年(905)に社が建立されました。延喜19年(919年)には社殿が造営され、道真公は「天満大自在天神(てんまだいじざいてんじん)」、「天神さま」として崇められるようになりました。これが太宰府天満宮の始まりとされています。太宰府天満宮は「学問の神様」、「至誠の神様」の道真公を祀った全国約12,000社ある天神さまをお祀りする神社の総本宮と称えられ、今日でも多くの参拝者が訪れ、人々の信仰を集めています。

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


著作権について

今回のねらい

  今回は、細胞同定と症例検討を提示しました。
細胞編は、骨髄像から類似細胞の鑑別に挑戦します。
症例編は、僅かな検査所見ですが、光顕的診断に至るまでの必要な検査や形態所見について考えて下さい。

問題

骨髄像の細胞同定を行なって下さい。

1-1<問題1-A>

  • BM-MG×1000

1-2<問題1-B>

  • BM-MG×1000

1-3<問題1-C>

  • BM-MG×1000

1-4<問題1-D>

  • BM-MG×1000

この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。

2-1<設問1>

【所見】
【50歳代.女性】主訴:発熱・全身倦怠感、リンパ節腫脹(-)、肝脾腫(-)
WBC53,800/μL,RBC450万/μL,Hb13.4g/dL,Ht39.1%,PLT15.6万/μL,NCC42.2万/μL

  • PB-MG×400

  • BM-MG×400

  • BM-MG×1000

  • BM-MG×1000

解答・解説

問題 1

   骨髄像の細胞同定を行なって下さい。

【解説】

(BM-MG×1000)



今回は、骨髄における類似細胞を提示しました。

【正答】
A-1.桿状核球、2.(顆粒)リンパ球 B-1.2.造骨細胞 C-1.2.分葉核球、3.骨髄芽球 D-1.2.多染性赤芽球、3.リンパ球、4.形質細胞 5.細網細胞(フェラタ細胞)

【解説】
A-1.細胞径15µm大、核は棒状を呈し、クロマチンの凝縮塊はみられません。細胞質には小さな好中性顆粒を認めます。棒状の形状とクロマチン凝縮塊が少ないことから桿状核球に同定しました。
2.は、1より小型で核網工の粗荒と淡青色の細胞質にやや太めのアズール顆粒を散在性に認めることから顆粒リンパ球に同定しました。

B-1.2. 細胞径20~30µmの大型、核網工はやや繊細で核は細胞質から今にも飛び出そうとしています。その細胞質は強度の好塩基性で、核から離れた位置にゴルジ野(→)が窺えることから形質細胞に類似した造骨細胞に同定しました。

C-1.2. 細胞径14µm大、核には分葉がみられ、クロマチンの結節が強いことから分葉核球に同定しました。
3. 細胞径12μm大の小型、N/C比は高く核網工は繊細で細胞質に好塩基性がみられます。N/C比は高く、クロマチン網が繊細であることから小型の骨髄芽球に同定しました。

D-1.2. 細胞径11µm大の小型で、両方とも多染性赤芽球に同定しました。2.は細胞質が多染性の色調でクロマチンの凝縮がみられることから多染性赤芽球と考えます。1.はクロマチンの凝縮塊がさほど強くないようですが、小型でもあることから好塩基性というよりも多染性赤芽球に同定したいものです。
3.は、1.2と同様の大きさですがクロマチンの粗荒によりリンパ球に同定しました。4.細胞径15µm大、核は偏在傾向で好塩基性の細胞質には核周明庭がみられることから形質細胞に同定しました。5.細胞径23μm大の大型、核網工は繊細網状で豊富な細胞質には粗大なアズール様顆粒を有します。前骨髄球に同定したいところですが、核質が繊細すぎること、細胞質が広すぎることから細網細胞、ないしはフェラタ細胞に同定しました。



問題 2

   この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。

【解説】

(PB-MG×400)

(BM-MG×400)

(BM-MG×1000)

(BM-MG×1000)

50歳代の女性。発熱、全身倦怠感を主訴として近医で風邪による治療を受けるが改善せず、右上肢、左下肢の動きに支障を来たすようになり、当院を受診しました。尚、リンパ節腫や肝脾腫は認めず、貧血はなく、白血球数のみが増加(53,800/µL)していました。

【解説】
末梢血は汎血球減少で、赤血球指数から大球性正球性貧血(MCV134.2fL,MCHC32.4g/dL)が認められました。
A. 末梢血液像は、Seg2%、Eo95%、Ly1%、Ab.Ly2%で好酸球の著増(51,110/μL)と異常リンパ球(→)が散見されました。異常リンパ球の形態は、N/C比が高く、濃染状の核で核形不整が顕著でした。

B:骨髄は過形成(42.2万/μL)で顆粒球系が優位の中、好酸球の増加がみられます。

C.好酸球には成熟過程が認められ、周囲には末梢血と同様な異常リンパ球(→)が4%みられました。
D.異常リンパ球の中には22μm大の大型で細胞質に大小の空胞を有する細胞(→)や大型のものもみられました。末梢血と骨髄の異常リンパ球などから形態的にATL細胞を考えました。

【追加検査】
抗HTLV-Ⅰ抗体(+)、LD586IU/L、Ca8.2mg/dL、sIL-2R高値

【臨床診断】
異常リンパ球は、抗HLV-Ⅰ抗体陽性、sIL-2R高値からATL細胞と考えました。末梢血および骨髄の好酸球増加は、ATL細胞を見逃しやすい状況であるため、しっかりとした観察が求められます。結局、白血球増加の割にはATL細胞は少なく、しかも大型であることからくすぶり型ATLと診断されました。
本例の治療は難治性で末期には白血球数6万台/µLとなり、好酸球60%の中、ATL細胞は33%と増加し 、急性転化の病態を呈しました。

【ATLと好酸球増加症の関連】
ATLと好酸球増加症の関連は不明なことが多く、一般的には、好酸球増加はIL-5 が関与すると言われますが、ATLでは上昇していないことが多いようです。一方、ATL細胞が産生するIL-3やGM-CSFの関与やATLと関わりが深い糞線虫などの寄生虫感染の関与も疑われます。ATLにおける発熱や高Ca血症は、IL-1が原因とも言われています。



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