第135回「マンスリー形態マガジン」2022年7月号

『夏至南風(カーチーベー)に吹かれながら・・・』

 沖縄は、1972年(昭和47年)の本土復帰から歴史的節目の50年を迎え、新型コロナウィルスの感染拡大による制限の中で5月15日午後、これまでの沖縄のあゆみとこれからの発展を祈念して沖縄と東京の2会場で記念式典が開催されました。このような行事から小職含め沖縄に対する気持ちを新たにされた方も多くいらっしゃるかと思います。

  今回は、2020年2月下旬に訪れました「勝連城跡」(かつれんグスクあと)について紹介したいと思います。グスク(御城)とは、12世紀から15世紀のグスク時代に奄美群島から先島諸島にかけて多数存在した遺跡を示しています。これらは、本土の戦国時代に築かれた防衛拠点としたお城とは異なり、城塞としての役割と館や拝所などを持ち合わせた御嶽としての施設であったようです。グスクでは、野積みの石垣が用いられていますが、その構築技術は極めて高く、マチュピチュ遺跡の石造技術と比較されることもあるようです。

  勝連城跡は、沖縄本島南東部うるま市、中部勝連半島に位置するグスクで首里城、中城城跡、座喜味城跡、勝連城跡、今帰仁城跡などと「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として2000年12月に世界遺産に登録されました。また、諸説がありますが12~13世紀頃、中部勝連半島の丘陵上に築かれ、自然の断崖を利用した“難攻不落の城”とされ、その城壁は自然の地形を巧みに利用して沖縄石灰岩の石垣をめぐらせた優雅な曲線を描き、女性的な美しさを感じさせます。グスクの最高部でもある一の曲輪(くるわ)からは、北は金武湾を囲む北部の山々、南は知念半島や中城城跡が一望できる沖縄有数の景勝地にもなっています。

  現在、勝連城跡では発掘調査が進められており、中国、朝鮮や東南アジアの陶磁器やローマ・オスマン帝国の貨幣などが出土されています。このように当時の勝連城では、さまざまな国との交易を行い、海上交易に拠点として栄華を極めていたことを知ることが出来ます。また、勝連城は最も古いグスクとされ、2017年4月、沖縄の「座喜味」とともに続日本100名城に登録されました。

    沖縄では夏至の頃、湿気を帯びた南~南西の風、夏至南風(カーチーベー)が夏の訪れを知らせてくれるそうです。今年も平年並みに梅雨が明け、沖縄にも夏が訪れ、77回目の終戦記念日を迎えようとしています。コロナ感染の再拡大で沖縄の友との語らいは少し先になるようですが、8月15日には平和を願いながら静かに過ごしたいと思います。

(資料:うるま市経済部観光振興課ガイドブック)

 

  • 登り口から観る小丘上の勝連城跡は紺碧の青空によく映え、沖縄有数の景勝地となっています。
    (撮影:阿南.2020.2.23)


  • 琉球石灰岩による幾多の曲輪式に築かれた連郭式山城として名を馳せた勝連城跡。


  • 勝連城の近隣に位置する名護湾を臨む絶好のロケーション「喜瀬ビーチ」です。
    (撮影:津崎このみさん.2022.6.29)



形態マガジン号キャプテン 阿南 建一


MAPSS-DX-202207-20


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今回のねらい

今回の細胞編は、骨髄像において鑑別を要する細胞を出題しました。
細胞の基本的な読み方に基づき判定してみてください。
症例編は、形態所見から染色体異常を推測可能な病型です。本マガジンでもたびたび登場していますが、特徴的な形態像を今一度再確認してみてください。

問題

問題1

1-1<設問1> 骨髄の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-2<設問2> 骨髄の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-3<設問3> 骨髄の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

1-4<設問4> 骨髄の細胞同定を行ってください。

  • BM-MG.1000

問題2

2-1<設問> この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。 また、鑑別する疾患とそのポイントも考えてください。

【成人例】 貧血を主訴に来院し、白血球増加と血小板減少から骨髄検査が施行されました。
WBC 13,100/μL、Hb 5.4g/dL、Ht 14.5%、MCV 93.5fL、PLT 2.1万/μL、NCC 13.4万/μL

  • PB-MG.1000

  • BM-MG.1000

  • BM-PO.1000

  • BM-EST二重.1000

解答・解説

問題 1

今回も骨髄における細胞同定に挑戦します。

 

【正答】

A-1. リンパ形質細胞性リンパ球、2.形質細胞、3.桿状核球
B-1.分葉核球、2.桿状核球、3.リンパ球  
C-1.細網細胞、2.リンパ球
D-1.多染性赤芽球、2.分葉核球、3.形質細胞

【解説】

A-1.細胞径22μm大、核はほぼ円形で偏在性、クロマチン網工は粗荒で核小体は不明瞭、細胞質は辺縁ほど好塩基性が強度です。形質細胞に類似し、核の占める割合(核占)が優位のことから形質芽球を考えますが、核質の硬さや核小体を認めないことからリンパ形質細胞性リンパ球と思われます。尚、単一な増加の場合はIgMの増量を確認します。
A-2.細胞径15µm大、核は類円形で偏在し、細胞質は好塩基性が強度で核占の割合が低いことから形質細胞(成熟型)と思われます。
A-3.細胞径12μm大、核は桿状様で湾曲しクロマチン網工が粗剛のことから桿状核球と思われます。

B-1.細胞径12μm大、核は桿状様で湾曲し上下にくびれがみられ、クロマチンはやや結節状、細胞質は淡橙紅色のことから分葉核球と思われます。
B-2.細胞径12μm大、核は桿状で湾曲しクロマチン網工は粗剛で軽度の結節状、細胞質は淡橙紅色のことから桿状核球と思われます。
B-3.細胞径13μm大、核はほぼ円形で偏在性、クロマチン網工は粗荒気味、核質は幼若顆粒を思わせますが、細胞質が淡青色のことからリンパ球と思われます。

C-1.細胞径22μm大、核は類円形で偏在性、核形不整がみられクロマチン網工は繊細網状、細胞質は灰青色で二重構造を呈し(矢印)、空胞や微細顆粒を有することから細網細胞と思われます。
C-2.細胞径11μm大、核はほぼ円形でクロマチン網工は粗荒、細胞質は淡青色のことからリンパ球と思われます。

D-1.細胞径11μm大、核は円形で中心性、クロマチン網工は凝集塊状、細胞質が青紫色のことから多染性赤芽球と思われます。
D-2.細胞径12μm大、核は桿状ながら僅かにくびれがみられクロマチンが結節状のことから分葉核球と思われます。尚、クロマチンの大きな凝集塊からペルゲル核異常に近いものかも知れません。
D-3.細胞径16μm大、核は類円形で中心性、クロマチン網工は粗荒、細胞質は強度の好塩基性で核の左辺縁部に僅かながら明色域がみられることから核中心性の形質細胞と思われます。



問題 2

この症例の形態所見から考えられる疾患は何でしょうか。また、鑑別する疾患とそのポイントも考えてください。

【成人例】 貧血を主訴に来院し、白血球増加と血小板減少から骨髄検査が施行されました。
WBC 13,100/μL、Hb 5.4g/dL、Ht 14.5%、MCV 93.5fL、PLT 2.1万/μL、NCC 13.4万/μL

成人例で、白血球増加(13,100/μL)と血小板減少(2.1万/μL)がみられました。

【解説】

A.[PB-MG.1000] 白血球増加の血液像で芽球が56%みられ、一部にアウエル小体(矢印)を認めました。
B.[BM-MG.1000] 骨髄は正形成(13.4万/μL)で、芽球は全有核細胞の58%と増加し、大小不同、核形不整や明瞭な核小体を有し、アウエル小体は芽球に複数のもの(左矢印)や好中球(右矢印)にも認めました。また、骨髄球あたりから後骨髄球にかけて細胞質膜に好塩基性の縁取りがみられました。
C.[骨骨髄-PO.1000] 骨髄のPO染色は芽球の95%が陽性で、好中球にかけて強陽性を呈していました。
D.[骨髄-EST二重.1000]  骨髄のEST二重染色は顆粒球系にクロロアセテートが強陽性を呈しました。


【臨床診断】

芽球は末梢血、骨髄ともに20%以上で、しかもPO染色が芽球の3%以上で陽性のためAMLの基準を満たしており分化型AML(FAB.M2)を疑いました。
本症には特徴的な形態所見が多く、まず芽球に大小不同、顕著な核形不整、明瞭な核小体、複数の束状のアウル小体がみられ、骨髄球あたりから細胞質に好塩基性縁取りがみられ、後者については未熟型の分化の速さが推測されます。また、顆粒球系全体にPO反応やクロロアセテートEST反応が強いことも特徴です。
これらの一連の形態所見は、8;21転座AMLを疑う根拠であり、顆粒球系マーカーの発現や45、X,-Y,t(8;21)(q22;q22)/RUNX1-RUNX1T1が証明され確定診断となりました。WHO分類(2001)では、骨髄の芽球が20%未満でも8;21転座やAML1/ETO(WHO.2008からRUNX1-RUNX1T1に変更)が証明されれば、特定の遺伝子異常を伴うAMLの範疇となります。尚、経験から本例のように性染色体の欠損は約50%にみられます。
臨床的には、治療前から腫瘍細胞の分化が速いため、早期に起こる再発リスクをクリアできれば地固 め療法で長期の無病生存も期待できるとされます。本型の特徴的な形態所見は診断につながりますので目に焼き付けることが大事です。

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