第30回日本臨床内科医学会報告

2016年10月10日(月・祝)東京 京王プラザホテル

  • 共催

新宿で行われた第30回日本臨床内科医学会では、ビタミン欠乏による神経疾患と題して福井大学の濱野先生に最新のビタミンと疾患の話題を臨床、基礎を交えた講演をしていただきました。認知症などの要因との関連も反応系から、また食事といった面からも語っていただいた有意義な講演でした。

第30回日本臨床内科医学会 ランチョンセミナー8】
【日      時】 2016年10月10日(月・祝) 12:10~13:00
【会      場】

京王プラザホテル(東京・新宿)  MAP

【演      者】 濱野 忠則 先生(福井大学医学部第2内科 准教授)
【司      会】 栗山 勝 先生(脳神経センター大田記念病院 院長)
【内      容】 ビタミン欠乏による神経疾患PDFダウンロード
【要      旨】 飽食の時代と言われて久しく、食品廃棄量の増加が問題になっている今日の日本でもビタミン欠乏症は存在する。典型的ビタミン欠乏症はむしろまれであり、潜在性の欠乏状態が存在する場合が多い。また、アルコール摂取量が増加するとともに単一ビタミン欠乏ではなく、複合したビタミン欠乏症となる。 
ビタミンB1欠乏による脚気・ウェルニッケ脳症、ビタミンB12欠乏に伴う亜急性連合性脊髄変性症・巨赤芽球性貧血が特に有名である。妊娠悪阻をはじめとする食思不振に対するビタミン製剤を含まない補液のみでの長期加療によるウェルニッケ脳症の発症も記憶に新しい。またアルコール多飲がなくとも胃切除後にはチアミントランスポーターの欠乏や、内因子分泌障害が生ずることによりビタミンB1やB12の吸収障害が生じうる。その他葉酸欠乏症による末梢神経障害、亜急性連合性脊髄変性症、精神症状、ビタミンB6欠乏症に伴う皮膚炎、口内炎、末梢神経障害が知られている。
さて、超高齢社会を迎えた現在、認知症患者数の増加は大きな社会問題となっている。ビタミンB12と葉酸はホモシステインをメチオニンに変換する際の補酵素として働き、ビタミンB6はホモシステインをシスタチオニン、システインに変換する際に重要であるため、これらの欠乏症は高ホモシステイン血症をきたす。高ホモシステイン血症は虚血性心疾患や、脳血管障害のリスクとなるばかりでなく、アルツハイマー病の独立した危険因子である。特にMTHFR遺伝子多型(C677T)を有する場合は、葉酸値が一見正常であっても有効利用ができず、高ホモシステイン血症をきたすため注意が必要である。アルツハイマー病をはじめとする認知症や脳卒中発症予防の観点からもこれらのビタミン欠乏、ならびに高ホモシステイン血症を早期に診断することは意味があろう。
ビタミン欠乏症は決して頻度が高いとは言えないが、補充による治療効果は絶大であり、治療、あるいは予防しうる神経疾患としてその可能性を常に念頭に置く必要がある。
【関連項目】


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