第90回 「マンスリー形態マガジン」 2018年10月号

『エッ、蚊と共存の時代が来る ?』

   自宅で4,000匹の蚊を飼育し、研究を重ねる18歳の天才少年(Tさん)を紹介します。これは、民放TVで2018.7.17に放映されたものです。一般に蚊のオスは果汁を吸って、メスは交尾後に産卵のためにオスから血を吸うそうです。世界で蚊の媒介によって年間に83万人が死亡すると言われます。
  Tさんの研究は、蚊が人間や動物を二酸化炭素で検知し、人の足の匂いを嗅ぐと交尾することを発見しました(交尾はオスとメスがハートの形をして飛ぶ)。蚊は一生に一度しか交尾しないと言われてましたが、足の匂いを嗅ぐと、複数回交尾することを見つけ、何と、7匹のメスに2時間で、76回交尾することに成功しました。
  蚊に刺されやすいのは、足の常在菌の多い人であることも発見しました。従って、外出する前に除菌シートで足を拭くことが大事なようです。ちなみに、昔から血液型ではO型が刺されやすく、A型は刺されにくいと言われます。彼の業績により、2016年筑波大学「科学の芽」賞、高校生部門受賞しています。これから、コロンビア大学の脳科学へ進むそうですが、理系の上位10名にも選ばれた頭脳明晰な少年です。夢は「蚊と人間が共存できる社会の実現」を目ざし、彼の研究によって血を吸わない蚊が生まれるかも知れません。
  ところで、“蚊はどうやって血を吸うのか ” をネットで調べてみました。針は合計で6本あるらしく、まず2本をノコギリのように使い皮膚を切り開きます。別の2本は切り開いた部分を支えます。そしてメインがちょっと太めなもので毛細血管を探り当て血を吸い上げます。もう1本は吸血の補助のために唾液を流し込みます。この唾液には血液を固まらないような成分が含まれていて絶妙というしかありません。しかし、蚊にも弱みがあり、35度以上の猛暑には勝てず、葉の裏で涼んで出番を待っているようです。
  私自身、蚊の生態を今になって知ったことの恥ずかしさ、それより「蚊と共存する時代」が来るとはこれまた驚きです。ちなみに私はAO型ですので、庭掃除でよく刺されるのはO型がいたずらをしているのかも知れません。庭の水まき、草取りには除菌シートを活用しなくちゃ!

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


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今回のねらい

  今回は、新生児の末梢血液像の単核細胞の区分に挑戦します。

新生児の分類は判定に悩みますが、成人の判定基準を参考にしてトライしましょう。

症例編は、わずかな臨床像と検査データから次なる検査を模索し、骨髄像から臨床診断を試みて下さい。

問題

新生児の末梢血液像にみられた単核細胞です。成人の判定基準を参考に同定して下さい。

1-1<問題1>

光顕的所見から臨床診断を考えて下さい。

2-1<設問1>

【所見】
【Case10】 1-5歳.男
主訴:腹部腫瘤  PO染色(陰性)
WBC3,100/μL、RBC404万/μL、Hb10.5g//dL、Ht30.5%、PLT27.8万/μL、NCC41.5万/μL

  • PB-MG×1000

  • BM-MG×400

  • BM-MG×1000

  • BM-PAS×1000/BM-ACP×1000

解答・解説

問題 1

   新生児の末梢血液像にみられた単核細胞です。成人の判定基準を参考に同定して下さい。

【解説】

PB-MG.1000








今回は、新生児の血液像の細胞同定に挑戦します。新生児の場合、生後の日数よりも在胎の日数を重要視する方が大事のようです。すなわち、正期産(在胎37週~41週6日)なのか、早産なのかによって、後者になるほど骨髄の機能は未だ弱く、末梢血に幼若細胞などが出現する頻度が高くなります。成人の判定基準を参考にしましたが、乳幼児には核形不整のリンパ球が出現するため、それはこの時期のリンパ球として捉え、成人とは異なる評価になるようです。

【正答】
A-⑥単球、  B-④異型リンパ球、  C-中型リンパ球、  D-①小型リンパ球  E-④異型リンパ球、  F-②中型リンパ球、  G-③大型リンパ球、  H-⑦活性化単球

【解説】
A.細胞径22μm大、N/C比は低く、核は軽度の不整でクロマチン網工はやや粗剛、一見リンパ球様ですが、灰青 色の細胞質には微細顆粒と空胞を有することから単球に同定しました。

B.細胞径20μm大、N/C比は低く、核は類円形でクロマチン網工は粗剛、核小体様は数個みられ、細胞質の好塩基性が強度なことから異型リンパ球に同定しました。

C.細胞径12μm大、N/C比はやや高く、核は不整形でクロマチン網工は粗剛、細胞質の好塩基性は中等度(淡青色)であることから中型リンパ球に同定しました。

D.細胞径10μm大、最も小型、核は不整形でクロマチン網工は粗剛(濃染状)、細胞質の好塩基性はやや強度であることから小型リンパ球に同定しました。

E.細胞径18μm大、N/C比は低く、核は類円形でクロマチン網工は粗剛、細胞質の好塩基性は強度であることから異型リンパ球に同定しました。

F.細胞径15μm大、N/C比はやや高く、核は不整形でクロマチン網工は粗剛、細胞質の好塩基性は弱く、アズール顆粒を認める中型リンパ球(顆粒リンパ球)に同定しました。

G.細胞22μm大、N/C比は低く、核は不整形でクロマチン網工は粗剛、細胞質の好塩基性は弱く、大型で好塩基性が軽度のことから大型リンパ球に同定しました。

H.細胞径20μm大、N/C比は低く、中心性の核は円形状でクロマチン網工はやや粗剛、細胞質の好塩基性は灰青色で小さな空胞がみられます。一見単球様ですが、核は円形で中心性、クロマチン網工がやや粗剛の所見がそれと合致せず、活性化単球に同定しました。単球でもよいのでしょうが形態が少々異なり、闘争期にある単球を思わせるようで活性化単球としました。単球は血中に1~3日循環して体内の各組織に移動すると言われます。
本例はアデノウイルス感染症です。



問題 2

   1~5歳.男性。主訴は腹部腫瘤です。

【解説】

(PB-MG×1000)

(BM-MG×1000)

(BM-MG×1000)

(BM-PAS×1000 BM-ACP×1000)


【末梢血】

(A)白血球数正常(3,100/µL)の白血球分類で、芽球様細胞1%、幼若顆粒球3%、赤芽球を1個を認めました。

【骨髄】
(B)過形成(41.5万/µL)の骨髄像の分類では、大型な芽球様細胞が増加し造血細胞の抑制がみられました。
なかには集塊状の細胞集団が特徴でした。

(C)集塊状の細胞のなかには偽ロゼット形成を呈し、N/C比がやや高く、クロマチン網工がやや繊細なものが多くみられます。なかにはクロマチン網工が網目状で裸核状(矢印)のものもみられ、これも特徴的な所見のようです。

(D)それらは、PAS染色に陰性(中央は陽性の好中球)で、酸ホスファターゼ(ACP)染色に陽性でした。
尚、PO染色は陰性でした。
以上より、集塊状の細胞集団のなかに偽ロゼット形成を呈しているものもみられ骨髄転移像(骨転移)を疑います。小児であり、腹部腫瘤の臨床所見や細胞形態所見から神経芽腫が考えられます。末梢血液像では軽度の白赤芽球症を認めたことから骨転移が予測できそうです。

【確定検査】
尿中ドーパミン3,043.1µg/day(280~1,100)、NF(ニューロフィラメント) 陽性

【免疫酵素抗体染色】
NF:陽性、NSE:陽性、EMA:陰性、LCA:陰性、ケラチン:陰性

【臨床診断】
小児例で腹部腫瘤は副腎原発と診断され、NFやNSEが陽性、尿中ドーパミンの高値などから非上皮性腫瘍の神経芽腫(neuroblastoma)と診断されました。裏付として、EMA、ケラチン、LCAが陰性より、上皮性腫瘍や悪性リンパ腫は否定されるものでした。すなわち、EMAやケラチンの上皮性マーカーが陽性であれば未分化癌の可能性があり、LCAが陽性であれが悪性リンパ腫が考えられます。尚、ACP染色の陽性は診断には直結しません。本例は神経芽腫ですが、古くは神経芽細胞腫とも言われていました。



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