第95回 「マンスリー形態マガジン」 2019年3月号

『プロ野球界のイダテンは ?』

  今回は、前回に続き「いだてん(韋駄天)」について、お話したいと思います。野球好きな私にとって、プロ野球界における“韋駄天”とは、元南海ホークス(現在の福岡ソフトバンクホークス)の広瀬叔功氏(現在82歳)が思い出されます。
  広瀬氏は、通算22年間の選手生活の中で歴代2位の596盗塁と2,157安打により、名球会入りを果たした往年の名選手です。また、1961年から5年連続盗塁王を獲得し、1964年に31連続盗塁成功(成功率82.9%)の日本記録を保持しています。現役時代の広瀬氏は、盗塁に対して強いこだわりがあり、試合の流れの中で、必要な場面でしか次の塁を狙いませんでした。通算596盗塁数でしたが、このこだわりがなければもっと大きな記録が誕生したかもしれません。尚、プロ野球の盗塁通算記録は、1位は福本豊氏(元 阪急ブレーブス;現在のオリックス・バファローズ)の1065個、2位は広瀬氏の596個、そして3位は柴田勲氏(元読売ジャイアンツ)の579個だそうです。尚、あのイチロー選手は、日米通算708盗塁を記録しています。
  一方、盗塁成功率(生涯200盗塁以上)では、1位は広瀬氏82.89%、2位は「代走のスペシャリスト」鈴木尚弘氏(元 読売ジャイアンツ) 82.31%、3位は松井稼頭央氏(現 埼玉西武ライオンズ 二軍監督)81.86%です。ここからもいかに広瀬氏が、ワンチャンスにこだわった「イダテン」ぶりを確認することができます。
   野球は、よく筋書きのないドラマと言われています。試合の結末は、9回を待たなければわかりません。また、試合の流れは、ホームランバッターによる一発逆転ホームランで流れを変えてしまう魅力もありますが、そう多くは望めるものではありません。やはり、ここは九回裏、二死一塁の場面で勝負に賭ける“こだわり” の 「イダテン」にドラマの結末を委ねてみたいものです。今年のプロ野球は3月29日に開幕します。皆さまも風にようにダイアモンドを駆け抜けていく「イダテン」を探しに、一度球場に足を運んでみませんか。

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


著作権について

今回のねらい

  今回は、細胞同定と症例検討を提示しました。
細胞同定は、骨髄における造血細胞と非造血細胞の形態所見の捉え方に挑戦します。
症例編は、わずかな臨床像と検査データから次なる検査を模索し、骨髄像から臨床診断を試みて下さい。

問題

末梢血液像の細胞同定を行なって下さい。何か異常所見はありますか。

1-1<問題1-A>

  • BM-MG×1000

1-2<問題1-B>

  • BM-MG×1000

1-3<問題1-B>

  • BM-MG×1000

1-4<問題1-D>

  • BM-MG×1000

光顕的所見から臨床診断を考えて下さい。

2-1<設問1>

【所見】
【40~45歳.女性】主訴:貧血、出血
WBC31,100/μL(Blast73%, Mo10%)、RBC172万/μL、Hb5.7g/dL、Ht17.1%、PLT1.4万/μL、NCC50.8万/μL

  • PB-MG×1000

  • BM-MG×1000

  • BM-PO×1000

  • BM-ESTdouble×600/PAS×1000

解答・解説

問題 1

   骨髄の細胞同定を行なって下さい。

【解説】

BM-MG.1000





骨髄の細胞同定に挑みます。なかには骨髄の分類中についつい見逃してしまいそうな細胞もありますので 注意深く観察してみましょう。

【正答】
A-1.芽球, 2.骨髄球, 3.正染性赤芽球, 4.リンパ球、
B-細網細胞、C-細網細胞、D-1.形質細胞, 2.細網細胞

【解説】
A-1.細胞径は14μm大の骨髄芽球として捉えました。前骨髄球の大きさが15~20μmですので、骨髄芽球はそれより小型になります。骨髄芽球は、N/C比が高く、クロマチン網工(核網工)のやや繊細さと好塩基性の細胞質がポイントです。一般に正常の骨髄芽球は、10~15μm大でアズール顆粒は持たないとされます。

A-2.細胞径は15μm大でA-1.と核の大きさは同様ですが、クロマチン網工は粗剛で核内の染色性のまだらさ、また、細胞質の淡橙黄色は成熟傾向にあり骨髄球に同定しました。

A-3.A-3.は赤芽球ですが、細胞質は正染性で核は濃縮(pyknosis)しているので正染性赤芽球に同定しました。

A-4.細胞径は13μm大、クロマチン網工は粗剛で淡青色の細胞質からリンパ球に同定しました。

B.細胞径は19μm大、細胞質周辺が判然とせず、クロマチン網工は粗網状であり細網細胞に同定しました。リンパ球に類似しているため、リンパ球様細網細胞とも言われるようです。細胞質の不鮮明さや核内のクロマチンの粗雑さは、非造血細胞の特徴と思われます。

C.細胞径は24μm大、一見前骨髄球を思わせますが、細胞質は鮮明でなく核質は崩壊状態であることからフエラタ細胞のようです。この用語は現在用いられていないので細網細胞の一種とするのが妥当かも知れません。

D-1.細胞径は16μm大、核は偏在傾向、クロマチン網工は粗剛でクロマチンの凝集塊がみられます。細胞質は好塩基性で軽度ながら核周明庭(ゴルジ体?)がみられることから形質細胞(成熟型)に同定しました。

D-2.B、Cと同様で細網細胞に同定しました。5時方向の好中球は原型を留めているので、広い細胞質に重なり合ったものと思われます。



問題 2

   30歳代.女性。発熱、貧血を主訴に来院されました。

【解説】

(PB-MG×400)

(BM-MG×1000)

(BM-MG/BM-PO×1000)

(BM-ACP/A-EST×1000)

正球性正色素性貧血(MCV99.4fL、MCHC33.3g/dL)、血小板減少(1.4万/μL)と白血球増加(31,100/μL)がみられました。

(A)末梢血は、芽球が73%(円形核の細胞右4個)、単球が10%(3,110/μL)と増加していました(左2個)。
(B)骨髄は、ほぼ円形核で一部顆粒を有する芽球(62%)と核形不整を有する単球系(青矢印;25%)、それに幼若好酸球(赤矢印;2%)がみられました。
(C)PO染色は、陽性の芽球(青印)と幼若好酸球(赤印)がみられます。
(D)EST二重染色は、顆粒球系がクロロアセテートに陽性で、単球はブチレートに陰性が多く一部弱陽性でした。
(E)PAS染色は、幼若好酸球に強陽性を示したものがありました。

【関連検査】
免疫形質:CD13・CD33・MPO/CD4・CD11b・CD11c・CD14・CD64(陽性)、HLA-DR(陽性)
染色体・遺伝子検査:46,XX,inv(16)(p13.1q22)/CBFB-MYH11(証明)

【臨床診断】
末梢血は芽球が73%でAMLの基準(20%)を遙かに超え、単球数が3,100/μL以上でした。骨髄は芽球が62%で、単球は25%みられました。双方ともに芽球が20%以上、90%未満のことと末梢血の単球数が5,000/μL未満であったことからAML(M2)が考えられました。しかし、骨髄の単球が20%以上からAML(M4)が浮上します。FAB分類のM4の診断基準における単球の評価は、末梢血または骨髄の条件のどちらかを満たす場合とありますので、本例は骨髄の条件が採用されるためM4として診断されました。しかし、後報告から染色体・遺伝子検査で、inv(16)/CBFB-MYH11が証明されました。これは異常好酸球の出現がポイントになりますので、再度鏡検すると、一般に言われる粗大顆粒を有する異常の好酸球は見当たらず、B.の幼若好酸球(赤矢印)が散見される程度でした。幼若好酸球はPOやPAS反応に陽性ですが、E.のような強陽性の態度は異常の好酸球の所見になりそうです。本例は染色体・遺伝子と好酸球の形態が合致しなかった例と思われました。
再発を無難に乗り切れば、シタラビン大量療法による地固め療法で長期の無病生存が得られるようです。



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