第96回 「マンスリー形態マガジン」 2019年4月号

『東日本大震災から8年‥』

  東日本震災から3月11日で8年を迎えました。
仙台市内で開催されるヘマトロジー講演会(ベックマン・コールター主催)では、被災の年から7年間参加させていただいております。その度、上空から観る仙台市内の街並みは、年を追うごとに家屋や工場が立ち並び、木々は彩りを添え、復興の兆しが伺えます。一方、被災者の住宅再建やその補助金を巡って自治体の対応が分れるなど、今でも課題は山積みのようです。現在でも約3,100人が仮設のプレハブ住居で過ごされており、約5万2千人が避難生活を続けられているそうです。復興庁の調べでは、災害公営住宅の98%は完成したとされていますが、津波被害の大きかった地域や福島第一原発事故による避難地域では、避難生活が長期化しており、今でも復興が遅れているようです。東日本大地震の復興期間は、10年と定められおり、2021年3月末には復興支援は廃止されますが、原子力災害の対応や産業の再生など地域の復興には多くの課題が残ります。
  また、同様に平成29年7月九州北部豪雨で被災した福岡・大分両県では、現在も約1,100人が、仮設住宅での避難生活を余儀なくされています。この災害は、特定非常災害に認定されず、福岡県の朝倉市と東峰村では、354世帯850人が仮設住宅やみなし仮設での避難生活を送っています。今年の7月には、その期限を迎えるため、朝倉市では、自力再建が困難な被災者のための災害公営住宅を“復興住宅”として建設し、2020年7月に完成予定です。しかし、これらも被災者の声が直接生かせる救済にはほど遠いようです。
  5月1日から新しい元号“令和”の時代が始まりますが、平成で起こったさまざまな災害での復興には、まだまだ時間を要することを忘れないよう日々を過ごしたいと思います。

形態マガジン号キャプテン 阿南 建一 


著作権について

問題

骨髄の細胞同定を行なって下さい。

1-1<問題1-A>

  • BM-MG×1000

1-2<問題1-B>

  • BM-MG×1000

1-3<問題1-C>

  • BM-MG×1000

1-4<問題1-D>

  • BM-MG×1000

光顕的所見から臨床診断を考えて下さい。

2-1<設問1>

【所見】
【30~35歳.女性】主訴:発熱・貧血
WBC89,100/μL、RBC155万/μL、Hb5.4g/dL、Ht14.5%、PLT2.1万/μL、NCC43.5万/μL

  • PB-MG×400

  • BM-MG×400

  • BM-MG×1000

  • BM-PO×400

今回のねらい

  今回は、細胞同定と症例検討を提示しました。

細胞編は、骨髄における同系統の同定や鑑別を要する細胞を提示しました。
症例編は、わずかな臨床像と検査データから次なる検査を模索し、骨髄像から臨床診断を試みて下さい。

解答・解説

問題 1

   骨髄の細胞同定を行なって下さい。

【解説】

BM-MG.1000





骨髄の細胞同定に挑みます。骨髄標本では、細胞の多さや人為的な塗抹法によって細胞の大きさが本来より縮小して見えることがあります。それらは赤血球に隣接することが多く、その部分は濃く縁取れてみえるため観察は可能ですが、その際、赤血球を取り払って大きさを予測することが求められます。

【正答】
A-1.単球, 2.リンパ球, 3.好塩基球, 4.前骨髄球, 5.単球,6.リンパ球、7.正染性赤芽球、 B-1.前骨髄球、2.分葉核好中球、C-1.リンパ球、2.前単球、3.正染性赤芽球、4-1.桿状核球好中球、2.後骨髄球、3.多染性赤芽球

【解説】
A-1.細胞径18μm大の単球に同定しました。核形不整と核網工の繊細さ、細胞質の弱好塩基性(通常は灰青色)が認められます。2.と6.は、15μm大でほぼ円形核、核網工は粗荒で細胞質が淡青色であることからリンパ球に同定しました。尚、6.は顆粒リンパ球になります。3.細胞径15μm大で細胞質には空胞化(水溶性のため)とやや太めの顆粒が核の上にも分布していることから好塩基球に同定しました。4.細胞径18μm大で核は偏在傾向、3時~5時のあたりは赤血球と重なり合っており、実際はもっと大きいと思われます。核小体がみられ(→)、細胞質は好塩基性で低(脱)顆粒気味の前骨髄球に同定しました。5.は核内への切れ込みがみられる(→)ことから単球に同定しました。7.は核濃縮を起した正染性赤芽球と思われます。

B-1.細胞径24m大の大型、核は偏在傾向で細胞質の周囲は赤血球と重なっています。細胞質の粗大なアズール顆粒を認めることから前骨髄球に同定しました。2.細胞径15μm大で核中央部にくびれが見られ、分葉核好中球に同定しました。

C-1.細胞径15μm大、核網工は粗荒で淡青色のリンパ球として捉え、細胞質には有尾状の突起がみられます。
2.細胞径22μm大の大型、核は類円形、核網工は繊細で核小体も認められます。細胞質は中等度の好塩基性とやや太めのアズール顆粒を認め、核質の所見を除けば前骨髄球を思わせます。しかし、核質の繊細構造から前単球と思われ、太めの顆粒は二次的変化が考えられます。3.細胞径10μm大の小型で核は円形、クロマチン凝集は若干残存していますが、核の萎縮を考え成熟傾向への正染性赤芽球に同定しました。

D-1.細胞径18μm大の大型、核網工がやや粗荒で、細胞質は淡赤橙色であることから巨大化した桿状核球好中球に同定しました。2.細胞径14μmで、核の短径が長径の1/3以上であること(小宮先生.1988)、また両側の核の陥没が1μm未満のこと(私見)から後骨髄球に同定しました。3.は細胞質の色調とクロマチンの凝集が強いことから多染性赤芽球に同定しました。



問題 2

   30歳代.女性。発熱、貧血を主訴に来院されました。

【解説】

(PB-MG×400)

(BM-MG×400)

(BM-MG×1000))

(BM-PO×400)

正球性貧血、血小板数の著減と白血球数の著増が認められました。

(A)末梢血は芽球が84%と増加し、一部にアウエル小体を認めました。
(B)骨髄は過形成で芽球は50%、以下顆粒球系の分化過程がみられ、赤芽球は著減していました。
(C)骨髄の芽球は、大小不同性、核形不整や核小体が見られ、細胞質には微細顆粒や複数のアウエル小体を有するものが認められました。
(D)PO染色は、芽球から好中球にかけて強陽性態度を呈し、芽球の全てが陽性でした。

【関連検査】
免疫形質:CD13・CD33・MPO/HLA-DR(陽性)
染色体・遺伝子検査:t(8;21)(q22;q22)/RUNX1-RUNX1T1(証明)

【臨床診断】
末梢血および骨髄の芽球が20%以上で骨髄では90%を超えないこと、また、芽球に対するPO染色の陽性率が3%以上であったことからAMLの分化型が考えられました。さらに染色体の核型異常として8;21転座が、遺伝子異常としてRUNX1-RUNX1T1が証明され、反復性遺伝子異常を伴うAMLとして診断されました。
本型の形態学的所見は診断に直結するものであり、そのポイントは、芽球および顆粒球系の形態とPO染色の強陽性態度にあるようです。私見ですが、1)芽球の形態:大小不同の混在、顕著な核形不整、明瞭な核小体、アウエル小体の多様性(長いもの・短いもの・束状)、2)幼若・成熟型の形態:骨髄球における細胞質の好酸性色調、低分葉核好中球・低(脱)顆粒好中球、3)PO染色:芽球の大半が陽性、成熟型にかけて強陽性をポイントとしています。これらの形態を把握すれば、本染色体および遺伝子変異は推測できるように思われます(阿南:第35回日本小児血液学会抄録.1993)。基本的には、AML-M2の病型が多いのですが、芽球が20%未満でも本染色体と遺伝子異常を認めれば、反復性遺伝子異常を伴うAMLのカテゴリーになります(WHO.2008,2016)。本型は、M2以外にM4とMDSで経験したことがあります。



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